寺子屋ふぁみりあ

2017.02.02

元当事者のお話

 10月6日、今年度6回目の「寺子屋ふぁみりあ」が開催され、ひきこもり経験のある青年2名(Mさん・Sさん)をお招きし、お話を伺いました。今回は、全青協スタッフ・伊東が質問を行い、お二人にお答えいただくというインタビュー形式で行われました。質問の中からいくつか抜粋し、ご報告いたします。

 

Q. ひきこもりから抜け出そうと決心して、ご自身がまず始めたことは?

 

A. (Mさん)

ひきこもっていたときには、親以外との接点がまったくなかったので、とにかく親以外の社会とのつながりを持とうと思いました。そこで、「まずは、思い切って街を歩いてみる。次に、勇気を出して居酒屋などのお店に入ってみる。そして、お店の店員さんと話してみる」といったことから始めました。お店の人と話すに当たって、自分がひきこもりであることをさとられないように、あらかじめ職業などの架空の設定を用意して望んでいました。さらに次のステップとして、ひきこもりの「当事者の会」などを親に探してもらい、参加するようになりました。

 

  (Sさん)

私は偏差値の高い大学への受験に失敗し、ひきこもるようになりました。ひきこもりから脱げ出すには、「今の状況から抜け出すこと」と「不安を取り除くこと」が重要だと思い、難しい志望大学に受験することをあきらめ、偏差値の低い大学を目指すことにしました。すると、少しプレッシャーが減り、気持ちが楽になりました。

 

Q. ひきこもりから抜け出すときに、どのようなことが大変でしたか?

 

A. (Mさん)

大変だったことは二つあります。一つは物理的な問題です。いざ家から出てみると、強迫性障害であることも影響し、他人の視線が気になり、外に出るだけで極度に疲れてしまったことです。二つめは、出ていける場所を探すことです。同じ立場の人がいるはずの「当事者の会」でも必ずしも馴染めるとは限らず、「当事者の会」に居場所を見つけることも難しかったです。そのため、一度外に出れるようになってから、再びひきこもることもありました。

 

  (Sさん)

大学に入学することによってひきこもりから抜け出すことはできたものの、同世代の人と付き合うことが苦手だったため、同世代との大学生活を送ることが大変でした。仲間内にもなかなか本音をさらけ出すことができず、うまく人間関係をつくることができませんでした。

 

Q. ひきこもりから抜け出すことができて良かったなぁと実感することは?

 

A. (Mさん)

好きなところに行けるようになったことです。以前だったら、家の外で行われていることは自分には関係のないものだったのが、自分が関わろうと思えば関われるようになりました。また、ひきこもっていたからこそ、外の世界で感動できる場所が多く、そういった点は、「ひきこもりを経験した上で抜け出した」ということの良い面だと思っています。

 

 

 (Sさん)

自分の所属場所がなかったので、大学に入って友達ができたことが良かったです。また、携帯電話もなかった当時は、公衆電話で友達と話すことが憧れだったので、初めて公衆電話で友達と話したときはとても嬉しかったことを覚えています。

 

 

 お二人とも、ご自身の体験をもとに、当時の想いや今に至る経緯など、誠実に語ってくださいました。いつも「寺子屋ふぁみりあ」の終了後は、講師を交えて振り返りを行っています。そのとき、今回の講師のお一人が、「今日来てくださっている参加者のそれぞれの家には、今現在もひきこもっている人がいる。そして、その人は苦しんでいる。今日はそのひきこもっている一人ひとりのことを想いながらお話をさせていただきました」とおっしゃいました。元当事者だからこそ、この言葉が出てくるのだと思います。そして、この言葉から、講師のお二人の今も苦しむ当事者に対する強い想いを感じました。講師のお二人も同じように苦しんでいる時代がありました。その苦しい時代を乗り越え、今日は大勢の人の前でお話をしてくださいました。なかなか思うようにはいきませんが、お二人のお話を伺い、あたたかい心と新しい希望を感じることのできる会になったのではないかと思います。

 

 なお、講師のお二人は昨年度に続いてのお話です。前回の講演は、昨年度「寺子屋ふぁみりあ」のブログをご覧ください。

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