生と死を見つめる集い

2017.01.24

お釈迦さまの最後の旅Ⅰ

11月22日、今年度7回目の「生と死を見つめる集い」が開催されました。今回から3回連続のシリーズで、中村元訳『ブッダ最後の旅』を参考に、全青協主幹・神仁より「お釈迦さまの最後の旅」のお話が持たれます。『ブッダ最後の旅』は、ブッダの死を説く代表的な経典「大パリニッバーナ経」の邦訳本であり、本書によってブッダ最後の旅の様子やその時のブッダの想いなどを学ぶことができます。今年度の締めくくりとして、3回続けて本書を学ぶ目的は、お釈迦さまの最後の足跡をたどることで、それを自らの死生観に取り入れ、深めていくことにあります。初回は「お釈迦さまの最後の旅Ⅰ」と題し、第1章〔鷲の峰にて〕・〔修行僧たちに教える〕の部分を学びました。

 

本レポートでは、〔鷲の峰にて〕を中心にその内容を簡単に振り返ってみます。〔鷲の峰にて〕は「国の統治の在り方」がテーマです。ここでは、お釈迦さまと弟子のアーナンダ(阿難)の問答によって、七つの教えが示されています。それは以下の七つです。

 

一、しばしば会議を開き、会議には多くの人々は参集している国は繁栄が期待される。

二、協同して行動し、協同して為すべきことを為している国は繁栄が期待される。

三、古くから定められた約束を破らず、それに従って行動しようとする国は繁栄が期待される。

四、古老を敬い、尊び、崇め、もてなし、古老の言葉を聴くべきものと思っている国は繁栄が期待される。

五、婦女や童女を暴力で連れ出すことをしない国は繁栄が期待される。

六、信仰の場所を敬い、崇め、支持し、供物する国は繁栄が期待される。

七、尊敬されるべき修行者に対し正当な保護と支持を与え、彼らが安らかに住する国は繁栄が期待される。

 

要するに、繁栄のある国には、国王が恣意的に国を統治するのではなく民主的な合議制に基づき、国民はみんなで支え合いながら約束を守って行動することが求められると説かれています。

 このように、国の統治に対するお釈迦さまの考えを学ぶことは、改めて「今の日本がどうであるか」ということを考えさせられます。さらに、日本に限らず世界に目を向けてみると、イギリスのEU離脱やアメリカのトランプ大統領の一連の発言など、共和制を唱えながらも自国第一主義・孤立主義に向かいつつあることが伺えます。

神主幹は、お釈迦さまの教えを学ぶだけでなく自分自身の生き方の中に取り入れることが大切であると強調します。お釈迦さまの教えの中には、幸せに生きるためのヒントがたくさん詰まっています。今回は「国の統治の在り方」に対するお釈迦さまの考えを学びましたが、それを通して、今私たちが生きる日本の在り方、そして世界の在り方を考え直す良い機会となりました。次回以降も、お釈迦さまの最後の旅をたどりながら、自分自身が一日一日を幸せに輝いて生きていくことのできるヒントを見つけてまいりたいと思います。

日常生活の中でお経をお唱えする機会は多々ありますが、経典の内容を学ぶ機会はあまりないのではないでしょうか。少し難解な作業ではありますが、神主幹のわかりやすい解説によって少しずつ理解し、ともに学びながら、自らの死生観を深めてまいりましょう。

生と死のプロセスワーク/自分自身の死を見つめる お釈迦さまの最後の旅Ⅱ
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