あおぞら奨学基金

2014.07.07

それぞれの未来へ―被災地の生徒たちは、今

  • 震災で住んでいた家が全壊し、母が頑張って仕事をしていますが、祖母も亡くなり、祖父も病気になり入退院を繰り返しているので、経済的な負担も大きく、私もアルバイトをしています。(2年生・女子)
  • 震災で自宅が全壊し、父も津波で亡くなりました。母(無職)と弟(高校生)、祖母と仮設住宅で暮らしていますが、家計は、現在祖母の年金収入のみです。(3年生・女子)

これは6月に届いた、被災地の高校生のための奨学基金「あおぞら奨学基金」の応募書類に書かれていた高校生の声です。

東日本大震災の発生から3年以上が経った今、、被災地の状況は安定してきているのではないかと思う方も多いかもしれませんが、未だ状況は厳しいようです。応募書類の一通一通から、その必死な思いが伝わってきます。
中には、年間の世帯年収が100万円に満たない家庭もあります。母子家庭や父子家庭だという記載も目立ちます。そして、応募する生徒のほとんどの自宅が、震災により全壊しています。

進路の希望を問う欄はというと、看護師や栄養士、薬剤師といった、資格を取って手堅く働けるような職種が人気のようです。しかし、進路の希望が空欄のままの生徒もいます。先行きの見えない家庭の状況にあって、将来の夢を見ることも難しいのでしょうか。

◆子どもたちの抱える問題とは

あおぞら写真.jpg「チャイルドラインみやぎ」がまとめた被災地の子どもの現状に関する報告書によると、宮城県沿岸部の小中学校の約7割が、自校の児童・生徒に「震災の影響と見られる問題が今もある」と答えており、実に8割以上の校長が「事態は深刻」ととらえているそうです。
その具体的な問題とは、「家計的に苦しい児童・生徒が増えている」が最多で、「家庭学習の場が確保できない」「家庭内の問題で精神的ストレスを感る」などが挙げられています。「震災から時間が経過し、生徒の抱えていたものが表面に出てきたような気がする」という回答もありました。

現地へ行けば、小学生から高校生まで、子どもたちは皆明るく接してくれます。しかし心配をかけまいとする「よい子」であるからこそ、胸の中の葛藤や不安を人に明かすことができず、つらい思いが続いてしまうのかもしれません。こころの不安と経済的な不安、両方を抱える彼らの荷を軽くしてあげられたら...。「あおぞら奨学基金」のプロジェクトは、こうして始まったのです。

◆"高校生らしく"過ごせるように

義務教育ではないために支援の狭間に置かれている、被災地の高校生をサポートする同基金では、おかげさまで今春、20名の卒業生を送り出すことができました。次ページの「声」をご覧下さい。
同基金では、支援者にサポーターとして登録していただき、紹介する生徒に対して月々1万円を支援していただいています。返済の義務はなく、定期代や参考書代、食べ盛りの彼らを満たす食費など、自由に使ってもらえるのが特徴です。家計を助けるためのアルバイトと勉強の両立に悩んでいた生徒にも、余裕が生まれているようです。

奨学生には、年に2回の近況報告をお願いしています。サポーターとなっていただいた方には、こうしたお手紙が全青協を通じて届けられ、本人の成長を知っていただくことができるようになっています。サポーターの方からは、「気持ちのこもったお手紙をいただいて感激している」という声も、多く寄せられているのです。
しかし、残念なことに奨学金を受けたい生徒に対してサポーターの人数が不足しており、応募してきた生徒のうち半数近くを、毎回お断りをしなくてはならない状態です。

全青協ではサポーターに加えて、この基金の運営を助けていただくご支援も募っています。彼らが貴重な3年間を「高校生らしく」過ごすことができるよう、皆様の温かいご支援をお待ちしています。

「あおぞら奨学基金」についてはこちらのページにも詳細がございます。
ご不明な点は、〈事務局〉03-3541-6725までお問い合わせください。

 

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