平和を学び・考え・願う 青年仏教者の集い

2003.09.11

結集!2003――9・11から三周忌 万灯法要

世界に衝撃を与えた9・11同時多発テロ。あの衝撃から、早くも2年の月日が過ぎ去りました。この間に世界では、宗教や国・民族の違いから互いを憎悪し、その憎悪を暴力で解消することを受容する風潮が広がりつつあります。

「平和を学び・考え・願う青年仏教者の集い(平仏集)」では、9・11テロから3回忌にあたる2003年9月11日に、この2年間にさまざまな形で犠牲になった世界各地の人々を追悼する万灯法要を、東京・新宿の常円寺で開催しました。

また、昨年来、平仏集では、『仏教者としての平和像を考える連続学習会』を開催してきました。これは、昨年9月に1周忌法要とシンポジウムを行った後、「学び足りない」という思いから、仏教者として何をすべきかを考えようと企画されたものです。6回にわたって、世界の民族紛争や宗教の現状を学び、仏教者として何ができるのかを考えてきました。

今回の3回忌法要に先立ち、この勉強会の総集編として、出席者数名による報告とトークも行われました。

ライブ・ピース・トーク

宗派や僧侶・在家といった枠を越えて若い人々が集った平仏集。その中から、この半年間の勉強会に継続的に出席してきた参加者によるトークが行われました。

左から枝木さん・渡部さん・菅原さん・下田さん・釜田さん 初めに、司会を務めるアーユス仏教国際協力ネットワークの枝木美香さんから、昨年9月のシンポジウムと、全6回の勉強会の内容が簡単に報告されました。その後、曹洞宗の渡部鋭幸さん・在家の下田志保さん・浄土真宗本願寺派の菅原智之さん・大法輪閣の釜田尚紀さんの4人が、勉強会の中で感じた思いや、今後の展望などを語り合いました。

イラク攻撃が始まってしまったことで無力感を感じていたけれど、「ソーラーパネルの利用で戦争の要因となる石油の利用を減らす」という具体的な提案や、軍隊を持たないコスタリカの事例を知ることで勇気付けられたという釜田さん。

同じように、石油をめぐる利権など、戦争が起こるからくりや、私たちの身近にもできることがあると勉強会の中で知ることができたという下田さん。「知る」「気づく」ことから、「わが身にひきかえて」考えていくようにしたいと、お釈迦さまの言葉を引きながら思いを語りました。

また、アフガンの人々の中で取材してきた方の話を聞くことで、イスラムの本当の姿を知り、他宗教への思い込みが自分にもあったことに気づいたという渡部さん。彼らにも自分と同じように大切な人がいる。だから、自分の周りのことも世界のことも同じように大切にすることで、血の通った平和像を生み出せるのでは、と訴えました。

菅原さんも、戦争は遠いことではなく、自分の生活と密接なのだと気づき、ピースウォークにも参加したといいます。そして、仏教の説く教え・「道」とは、ただ見聞きして学ぶだけではなく、「歩んで」いくものなのではないか、と語りかけました。

出席者各々が、当初は無力感を感じていたのが、勉強会での学びを通して、次第に何もできない自分を自覚しながらも、あきらめることなく、平和のためにできることを模索しようという姿勢に変わっていったことがうかがえるトークでした。

全員が語り終えると、聴き入っていた参加者から、自然に大きな拍手が沸きあがりました。それは、それぞれに道を探し求める仏教者たちへの力強いエールであったようです。

万灯法要

この日の参加者や、6日に行われたSoZoフェスタの参加者から、この日の法要のために、あらかじめ献灯が捧げられていました。

平和への祈りや思いが託された、およそ500個のろうそくが参道に並べられ、順次点火されていきました。暖かな色の灯りが常円寺の面する青梅街道からもよく見え、帰路をたどる新宿の人々にも、平和への思いを共有してもらえたようでした。

ろうそくの灯る中、3回忌追悼法要が営まれました。参列者全員で三帰依文をお唱えした後、表白(法会の趣旨を仏前と参列者に告白する文章)が読み上げられました。

《表白》
敬って ブッダのみ前に申しあげます/
ここに 2001.9.11テロ犠牲者や
アフガニスタン・イラク戦争等
憎しみと暴力の連鎖による多数の犠牲者を偲び
哀悼の意と非戦の誓いのもとに
3回忌法要を厳修致します/
思えば人は 殺し合いの歴史を繰り返してきました
時に 自らの欲望を神仏の名を借りてまで正当化し
他を有形無形の暴力をもって
踏みにじる性を持ち合わせております
そして人は 報復を抑える理性を持ちつつも、
感情に流され暴力を肯定してしまう
悲しい生きものであります/
「どんなものも いのちは愛おしい
我が身に引き比べて 殺してはならない
殺させてはならない」
とは原始仏典の一節であります。
暴力のない そして 暴力に対処するための
兵も武器も必要ない世界
それは 自らの悲しい性を見つめ・気づき・目ざめ・
他者と手を取り合っていくところから
始まるに違いありません/
暴力のない平和な社会を
ただ祈るだけでなく 願いをもって実現して参ります/
暴力の連鎖がとどまらずに続く今こそ
その道を歩んで参りますことを、
敬ってブッダのみ前に誓って申しあげます

そして、慈悲経(メッタスッタ)を、お釈迦さまの時代の言葉に近いパーリ語と日本語とで読経しました。「すべての生きとし生けるものよ幸いなれ」という言葉が繰り返されるこのお経は、また「怨みを捨て、敵意を捨て、すべての生きとし生けるものに対して慈しみのこころを起こすべし」とも説いています。参加者それぞれが、そこに説かれた教えを味わいながら、平和への思いを強くしました。

最後に、2年前、ハイジャックされた最初の飛行機がニューヨークの貿易センタービルに衝突した時刻(現地時間午前8時46分/日本時間午後9時46分)に合わせて常円寺の鐘が撞かれ、新宿の高層ビル街に平和を願う鐘の音が鳴り響きました。参加者は一様に目を閉じ、それぞれに祈りと願いを鐘の音に託しました。

平和に向けて

平仏集では、昨年9月の一周忌法要とシンポジウムを皮切りに、この1年間、仏教者として平和のために何をすべきかを模索し続けてきました。その中でイラク攻撃が開始され、活動は、ただ学ぶだけでなく、実際に平和のために行動する形へと広がりを見せていきました。声明文の提出・73日間のべ24人が参加したリレー断食・平和集会・ピースウォークへの参加・そして「平和をつくるSoZoフェスタ」の開催......。

この「学び・考え・願う集い」は、この1年間に少しずつ成長していったようです。そしてその成長が、参加者一人ひとりにとっての成長にもつながり、学び・考え・願い、そして行動するきっかけとなっていったのではないでしょうか。

今回のライブ・ピース・トークと3回忌は、そういった活動の集大成として、一つの区切りをつけるものとなりました。今後は、より世界を知ることで平和につなげていこうと、海外の仏教者の話を聞くなど、地道な活動を続けていく予定です。

平仏集の活動そのものは一区切りしますが、平和のための活動や祈り・思いに区切りをつけることはありません。平仏集のメンバーだけでなく、勉強会やイベントに一度でも参加してくださった方、HPを閲覧してくださった方、あらゆる人々に、平仏集の願いが伝わることを、そしてひとりでも多くの人が、小さくても大切な一歩をほとけさまの教えという「道」に向けて踏み出してくれることを願って止みません。(内)

(ぴっぱら2003年11月号掲載)

「子弟教育を考える」フォーラム
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