お寺と社会の協働

2020.01.09

「地域社会の安全安心を考えるフォーラムin川崎」を開催いたしました。

子どもをはじめすべての人びとが健やかに生きることのできる社会とは──。 

 全青協では去る11月16日に、川崎市多摩市民館において、多摩区PTA協議会・株式会社よみうりランドとの共催で、安心安全な地域社会づくりについて考えるフォーラムを開催しました。

◆ 事件を未然に防ぐ社会づくりを

 5月28日に川崎市の登戸で発生した殺傷事件。事件は子どもの命を狙った無差別殺傷事件であり、事件後に自ら命を絶った当時51歳の犯人は、長年にわたりひきこもり傾向にあったことが指摘されています。前半のパネルディスカッションでは、3人のパネリストがこの事件をどのように受け止めているのかについて語りました。

 多摩区地域教育会議議長の高森康広さんは、「今回の事件の直後に臨時総会を開いて、関係者の意見交換を行った。はじめは、どうすれば子どもたちを守ることが出来るのかについて話し合っていた。しかしながら話を進めるうちに、どうすれば今回の事件を犯すような孤立した存在を生み出さないように出来るのか考えるようになっていった」と報告しました。

 多摩区PTA協議会会長の木村徹さんは、保護者としての立場から、「個人的には多くの保護者に集まってもらい話をすることが大切だと考えている。親同士がつながれば子どもたちも繋がることが出来るし、不登校やひきこもり状態にある子どもたちにも関わりを持つことができるだろう」と語りました。

 多摩区役所高齢・障害課課長の森田博志さんは、「ひきこもりといっても、障がいの有無や経済的な事情など、その原因はさまざまである。対応窓口が分散しているので、ワンストップで解決に導く「ひきこもり地域支援センター(仮称)」を設置し、地域全体で支え合う包括支援システムが必要」と、ひきこもり当事者や家族に対する行政としての切れ目ない支援の重要性について語りました。

 3人のパネリストの発言を受けて、コーディネーターの神仁主幹は日本社会の過度な同調圧力ついて指摘しました。「日本は少しでも他者と違うと仲間外れにする風潮がある。それぞれの個性、特徴を受け入れた教育、社会づくりを目指していくことが、問題を未然に防いでゆくのではないか」

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◆ 認め合い、助け合う

 後半は参加者全員によるグループディスカッションを行いました。参加者からは次々と活発な意見が出されました。

 「誰しもが何かをきっかけに孤独の心の闇を抱えてしまうことがあるかもしれない」 「自律することと、助け合うこと、両者のバランスが必要だと思う」「SNSも含め、子どものころからコミュニケーションスキルを育む機会が必要」

 グループディスカッションを受けて、パネリスト3名からは次のようなコメントが発せられました。

 「親も地域の中の関わり合いの中で無理をし過ぎず、まず楽しみながら地域活動に取り組むことが大切。その親の姿が子どもたちにとって教育になるのではないだろうか」(木村)

 「川崎市の子ども会議のように、子どもたち自身がそれぞれの意見を持ち、たとえ意見が衝突したとしても、お互いを認め合えるよう育んでいきたい」(高森)

 「行政として関わり合いのないことを見つけて断るのではなく、関れることを見つけて、関係者の中で繋いでいくようにしたい」(森田)

 本フォーラムの総括として神主幹は、「他者を傷つけることは許されないが、皆が安全安心に自分自身を受け止めてもらう場所を求めている。じっくりと待ち、相手の感情を受け止めていく、市民一人ひとりがそのことを心がけていくことで、人が孤立しない社会がつくられていくのではないか」と語りました。

 同調圧力の強い日本の社会環境にあって、今求められているのは、人それぞれの多様なあり方を認める寛容な心ではないでしょうか。お寺も地域社会の中で、一人ひとりに安全安心を提供できる空間として、その機能が問われているように思われます。

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第12回上智大学・慈恵医大ジョイントシンポジウム 「医療におけるスピリチュアルケアの現状」 ―子どもたちに豊かな地球をつなぐキャンペーン-「2021年度 臨床仏教研究所公開研究会」を開催しました
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