寺子屋ふぁみりあ

2013.08.15

生きづらさを抱えた若者の声を聴く

7月4日の寺子屋ふぁみりあは、明星大学人文学部心理学科教授の高塚雄介先生を招いて、「生きづらさを抱えた若者の声を聴く~ひきこもり・自殺を急ぐ若者たちをどう支えるか~」とのタイトルでご講演いただきました。

昨年に引き続き、ひきこもりの調査結果を元にしたお話とともに、今回は急増している若者の自殺等の問題を重ねながらお話していただきました。
photo_8.jpg人間の生きる力とは攻撃性という問題と絡んでおり、人間関係や空間・時間の最も居心地の良い状態を人間は模索していて、それが上手くいかないときに歪んだ攻撃性として現れるそうです。また、それが外に対して向けられるといじめ・校内暴力・家庭内暴力となり、内に対して向けられるとひきこもり・自傷行為(摂食障害・薬物依存・リストカット)・自殺となって表れるとのことです。


ひきこもりをもたらす背景要因についてのお話では、現代の社会は西洋文化的な価値観と古くからの日本文化的な価値観の2つの価値観を持っているとのことで、自己決定や自己責任という自立を強く求める価値観と、周囲との調和を求める価値観の2つの世界を若者に内在させようとしているところに矛盾が生じるのではとのご指摘でした。
個性豊かに自分を大事にするならば時として人とぶつかることも覚悟しなければいけないし、人との関係を良くするならば時に自分を捨てなければならないはずです。
また、真面目で、自己へのこだわりが強く、自尊心の高い若者の方が実はひきこもる傾向にあり、彼らは自律性(葛藤を処理する能力)が育たないまま大人になってしまっているとのことです。


そして現代は、効率が重視される時代となり、言語的コミュニケーション能力・対人関係を構築する能力・テキパキと課題を遂行する能力が社会でも学校でも求められています。そこでこうした価値観の下、今の社会や学校教育についていけない子どもは、ひきこもりになっていかざるを得ないとも述べられました。
かつては、そうした能力が高くなくても社会では受け入れられ、働く場もあったはずです。
今のような余裕のない社会では、他者のことを気にかけたり共感したりといったことは薄れつつあり、ひきこもりの若者も含めた若い世代は誰にも頼ることができず、死を選ぶことに関しても自己決定・自己責任だという感覚に陥りやすいのです。

若者たちにこのように錯覚させてしまういまの社会のあり方を、皆が見直しても良いのではないかというお話でした。

あらためて「ひきこもり」を考えてみる 高年齢化するひきこもりの人たちの思い
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