寺子屋ふぁみりあ

2010.10.31

寺子屋ふぁみりあ体験交流会 建長寺 開催!~ひきこもり当事者の親や家族のための体験交流合宿~

秋の気配が濃厚となってきた10月30・31日の2日間、全青協では「寺子屋ふぁみりあ」の特別プログラムとして、初の体験交流合宿を開催いたしました。
寺子屋ふぁみりあとは、日本財団の助成を受け、今年度より浅草寺福祉会館と協働し開始した、ひきこもりの状態にある子どもを持つ、親や家族のための学習と交流の会です。

今回は、加盟教団である神奈川県鎌倉市の臨済宗建長寺派総本山、建長寺のご協力をいただき、お寺での合宿が実現しました。

雨天決行!

迎えた初日は、なんと朝からスコールのような大雨。時季はずれの台風が関東に迫っていたのです。しかし、「みなさん欠席されるのでは......」というスタッフの心配は幸いにも外れ、集合時間には、長靴にレインコート姿の参加者が次々と姿を現しました。そうして一人も欠けることなく、女性11名、男性3名の参加者計14名と5名のスタッフで、無事に開講式を迎えることができました。
開講式は、建長寺本堂にあたる方丈にて行われました。歴史あるお堂に初めてお参りするということで、当初は緊張気味だった参加者も、高井正俊宗務総長によるご法話がはじまると、その朗らかな語り口に、皆思わず笑顔にかわりました。 「日々いろいろなことがありますが、目の前のできることを一生懸命見つめていきましょう」とのお言葉にうなずく参加者たち。配られた研修聖典を真剣に目で追いながら、般若心経などをおとなえしました。

古刹での坐禅体験

体験交流合宿は、同じ悩みを持つ参加者同士が交流しながら、坐禅や食作法などの行を体験することにより仏教の精神にふれ、こころを静めて明日への活力を養うことを目的としています。
鎌倉時代の建長5年に、第5代執権北条時頼によって創建された建長寺は、わが国初の修行道場として、以後750年以上継承されてきた古刹です。
国宝の梵鐘をはじめ、重要文化財に指定されている建造物も多く、境内に漂うその静謐な空気は独特のものでした。「こんな素晴らしいところにお泊めいただけるなんて、なんてありがたい」百畳を越える大広間に案内された参加者は、口々にそう感想を漏らしています。
昼過ぎからは、早速坐禅が行われました。坐禅は、禅堂ではことのほか大切な修行とされています。座り方や姿勢、心持ちなど、建長寺のご僧侶に事細かな指導をいただきながら、この日は約40分間、計二回の坐禅を体験しました。
室内はしん、と静まりかえっています。しかし、外は嵐。境内の木々が風に煽られる様子が、かすかに耳に入ってきます。非日常的な雰囲気の中、時折乾いた警策の音が響きました。
今回は、自分の意思によってご僧侶にお願いをし、警策を受けることができます。はじめは遠慮がちだった参加者も、二回目に入るとすすんで警策をお願いするようになっていました。
感想を尋ねてみると、「普段家にいると、いつも頭のどこかで悩み事を考えているので、こうして無になる時間ができてスッキリとした」という声があれば、「じっとしているのは、やはり辛かった」という人もいて、それぞれにとって新鮮な体験となったようです。

話題は尽きることなく

坐禅を終え、日帰りの参加者は一度ここで解散となりましたが、宿泊予定の人たちにとってはお待ちかね、夕食の時間です。禅堂のしきたりでは、本来夕食はとらないことになっているため、夕食は「薬石」と呼ばれています。
食事の場面も、やはり大切な修行の場です。ご僧侶の指導の下、食事に関する作法「食作法」を学び、お経を唱和した後、静かにいただきました。
ご飯に煮物、汁物、香の物と、お精進の薬石はたいへんに美味しいものでした。中でも「けんちん汁」は、ここ建長寺が発祥ということで、「ここでいただけるなんて感激もひとしお」という感想も漏れました。
就寝前に、車座になり行われたフリートークの時間でも、「食材一つひとつを意識していただくことで、普段何気なく食べていることのありがたさを感じた」という食作法や薬石についての感想、また、仏教や宗派についての質問や意見など、予定の時間を大幅に過ぎても、遅くまで話題が尽きることはありませんでした。

朝の空気の中で

2日目は6時に起床。台風が抜け、さわやかな天気となったこの日は、読経、坐禅、法話をいただいた後、使わせていただいたお部屋をはじめ、方丈の外陣を掃除する作務を行いました。
歴史あるお堂を拭き清められるなんて滅多とないこと、とすっかり打ち解けた参加者たちは談笑しながら、手際よく作業を進めていきます。
家庭内のさまざまな状況が長く続き、体調に不安を抱えていた参加者もいたようですが、朝の空気の中、掃除する一人ひとりの顔は晴れやかで、体験交流合宿を計画させていただいてよかったと、思わずホッとする瞬間でした。
その後は、写経を行ったり、普段は一般の方がなかなか立ち入ることのできない諸堂内部を、ご僧侶の説明をうけながら見学させていただいたりと、「本当に来てよかった」という言葉も聞こえて来る中、閉講式を迎えました。
生活のすべてが修行という禅の教えは、母親や父親という立場から、家庭の課題に目を奪われがちな参加者に、また違った視点と価値観を提供したようにも見えました。
ご協力をいただいた建長寺の皆さまに深く感謝を申し上げ、全青協では、今後も参加者のお心に寄り添えるよう、微力ながら努めていきたいと思います。

特別プログラム・伝法院 発達障害とひきこもり 発達障害がある人の社会における生きにくさから支援を考える (1)
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