寺子屋ふぁみりあ

2018.11.01

自己治療としてのひきこもり行動と、そのケアについて

2018年5月10日、平成30年度第一回目の寺子屋ふぁみりあが開催されました。
今年度の会場は、「築地本願寺 東京仏教学院(第一伝道会館の2階)」になります。

今回は、精神保健福祉士としてカウンセリングルームベアで臨床に携わっている田中剛先生に、「自己治療としてのひきこもり行動と、そのケアについて」と題してご講演いただきました。

以下は講演抄録です。

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1.精神保健福祉士の職域

 精神保健福祉士は、心に関するソーシャルワーカーや心理的ケアまで、いろいろなことができる資格です。
 私は主に、心理検査、カウンセリング、グループミーティングの司会といった、クライエントを直接支援する仕事をしています。

 2.心理療法について

 ひきこもり本人の多くは、自身もご家族も認識していないような、プチトラウマ(傷つき体験)を持っています。この体験自体は消せません。でも、言葉が出ない、人と会えない、面接に行けないといった、つっかえ棒を低減することは、カウンセリングでは可能です。曝露療法、認知行動療法、トークセラピー、夢分析など、あらゆる技法を用います。
 本人が行かなくても、ご家族と専門家との相談の中で、ある程度は推測できると思います。少し無意識の蓋を開けて、ふぁみりあのような、治療的な良い雰囲気の中に足を運ぶだけで、皆さんの心は自動的に回復の方向へ向かっていきます。そういうことを心理療法で、私は日々行っています。

 3.見立て(心理的診断)について

 トラウマティックな記憶を自己治療しているのが、ひきこもりだと思います。日常的なものを見たり感じたりすると、このトラウマが簡単に再現してしまいます。そういう場面を回避するための道具として、ゲームへの没頭、パチンコ、ショッピングの浪費、洗浄強迫などがあります。
 トラウマと依存症は仲が良く、例えばアルコール依存や薬物依存の方達は、ほぼ間違いなく何らかのトラウマを背負っています。

 4.コミュニケーションと、関係性の治療

 共依存という言葉を聞いたことがありますか?本来なら家族にもあるべき、本人と私との境界線を、超えて援助するような関係です。問題が家族の中で起こると、なかなか適切な距離感を取るのが難しい。それが、余計問題をこじらせる可能性があります。
 言いたいことを言わないで我慢してても、何ら良いことは無いです。ポジティブに、私メッセージで、相手に理解を示しつつ、さわやかに自己主張できた方が、健康な家族関係や距離感に近づきます。
 ご家族の場合、ふぁみりあのような家族会に出てくるのは、すごく重要です。私たちがつかんでいる臨床的な事実からすると、家族会に出てきている方のほうが、ずっと良くなります。ふぁみりあのような所に来て、ちょっとしたプチトラウマを吐き出し、明るく対等に言えるコミュニケーションや関係性を整えることを、是非続けていただきたいと思います。

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