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2025/10/16


第9期「臨床仏教公開講座」開催報告

「生老病死」に向き合い、現代社会の苦悩に寄り添う仏教者を育てる「臨床仏教師養成プログラム」の第9期は、2025年4月3日より開講しました。本プログラムは、仏教の慈悲と智慧を基盤に、医療・福祉・教育・地域支援などの臨床現場で実践的に活動できる専門家の育成を目的としています。
養成課程は「座学課程」「ワークショップ課程」「OJT(臨床実習)課程」の3課程からなり、今期となる第9期「座学課程(臨床仏教公開講座)」は、およそ隔週に1回、全10回にわたって開催されました。会場参加とオンラインを併用し、各回約50名が参加しました。
 最終講となった10月16日は、「グリーフケアと臨床仏教 ――今、生老病死に寄り添うこと」と題して、かけがえのない人や大切なものを失った時に経験する感情(グリーフ=悲嘆)を抱いた方に対して、仏教者はどのように寄り添っていくべきかという内容で、研究所の神仁所長により講義がなされました。

▽臨床仏教師の役割とは
神所長は、児童虐待や老老介護、そしてひきこもり状態にある子どもを高齢の親が支える「8050」問題など、現代の日本社会が抱える諸問題に触れ、これらは人と人との縁が切れてしまっている「孤立化する社会」で一層、深刻化するものであり、はるか昔から医療・福祉・教育の現場となっていたお寺が、再びその受け皿として機能していくことが必要なのではないかと語りました。
その言葉通り、現代のお寺や僧侶の役割は、主に葬儀や法事に限定されてしまっているといえるでしょう。しかし、枕経に始まり、通夜、葬儀といった一連の流れはただの儀式・儀礼ではなく、大切な人を亡くした人にとっては重要なグリーフケアのシステムであることを指摘しました。
神所長はまた、東日本大震災後に被災地でなされた、ケアにまつわる多くのエピソードを紹介しながら、グリーフケアとは、グリーフを抱える当事者の回復の経過が尊重されるべきであり、その人の話に耳を傾けることや、こころを寄せてそばに居続けること、つまり、「Not doing,but being」の姿勢こそ、ケア従事者が目指すべきあり方であることを強調しました。
また、臨床仏教師を目指す活動者にとって大切なことは、「生とは何か、死とは何か」ということを含めた自身の死生観、そして仏教徒としての「信」を確立しようと努力し続けることではないか、と述べ、全10回の講座を総括しました。

▽「寄り添い人」となるために
今後は、「ワークショップ課程」が2026年3月から8月にかけて開催される予定です。座学で学んだ知見をもとに、生老病死の「今」に即した支援の方法を実践形式で体系的に学んでいきます。
また、12月10日には、東京にて臨床仏教研究所の公開研究会が開催されます。アメリカのペンシルベニア大学附属病院で約10年間、チャプレン(宗教をベースとした〝いのちのケア〟を行う宗教者)を務めた天台宗僧侶、古村栄伸特任研究員による基調発題や、臨床仏教師による活動発表が予定されています。研究会の締めには、2年に及ぶ全過程を今年春に修了した第8期生の、臨床仏教師認定式も行われる予定です。
これまで認定された臨床仏教師は、病院で終末期や難病の患者さんのお話を聞いたり、介護施設で傾聴ボランティアを行うなどして日々活動しています。臨床仏教師の認定者が口を揃えて語るのは、認定はあくまでスタートラインであり、ケア対象者からたくさんのことを学ばせていただく、一生の修行の始まりであるということです。
第10期の臨床仏教公開講座も来年度、関西での開催が予定されています。支援やケアを待つ方がたのため、いのちの現場に希望の光をともす「寄り添い人」を多くの方に目指していただければと念じて止みません。


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