正力松太郎賞

2020.06.03

第44回正力松太郎賞 受賞者が決定いたしました!!

昨年9月から12月まで公募いたしました「第44回正力松太郎賞」の受賞者が、3月4日に開催された選考委員会にて決定いたしました。
今回は、本賞2件と奨励賞1件が授賞となりました。
青少幼年を取り巻くさまざまな社会問題が取り沙汰されている昨今、青少幼年とともに、ひたむきに仏教の示す生活を歩んでいる活動者を広く紹介することは、教育や保育の現場に一つの指針を示すことにもつながります。
地道なご活動の中で子どもたちを育み、その心に仏教の種をまいてこられた受賞者に敬意を表するとともに、ひとりでも多くの仏教者が後に続くことを願ってやみません。

 

正力松太郎賞 本賞

平野 仁司さん(神奈川県座間市/浄土宗宗仲寺前住職・座間学園理事長)

 平野仁司さんは、神奈川県座間市にある宗仲寺にて、1955年、20歳の頃に子どものための日曜教園を開設しました。農業や養蚕が盛んだった地域のため、農繁期託児所を開いていた両親の影響を受けた平野さんは、子どもたちをお寺に集めて仏教のお話をしながら、大学の児童研究部で培った童話や人形芝居を披露するなどして子どもたちを楽しませてきました。1962年には、地域で初となる幼稚園を開園しました。以来、60年もの長きにわたって大勢の子どもたちに仏教情操教育を行っています。

 現在、日曜教園は土曜教園となり、毎月一度、土曜日の朝からお昼にかけて90名ほどの小学生を集めています。本堂でおつとめをして、法話を聴き、レクリエーションなどをした後、手作りのカレーライスをみんなで食べて楽しい時間を過ごしています。

 おつとめの際には、「いのちをたいせつにする人間となろう」など、全青協制定の「ほとけさまの6つのねがい」を子どもたちと朗読し、大きくなっても仏教情操にふれてほしいと願いながら、子どもたちのこころを育む活動を続けています。 

 また、自坊での活動のみならず、平野さんは浄土宗児童教化連盟など諸団体の理事長を歴任し、仏教子ども会運営の手引書を発行するなど、幼児・児童教育者に対する教育・啓発活動を実践し、後進の育成にも力を注いでいます。

 「開かれたお寺づくり」を目指す平野さんはまた、仏教行事にあわせた集いを季節ごとに行うほか、写経会や詠唱の会、宗朝会(朝の勤行・情報交換の場)、生涯学習の集いなど、多くのサークルを主催しており、子どもから高齢者まで、世代を超えた教化と憩いの輪を結んでいます。

 長年にわたる青少幼年への教化活動と、地域社会への貢献が高く評価されての受賞となりました。

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一般社団法人 仏教情報センター(東京都文京区/理事長:浄土宗戒法寺住職・長谷川 岱潤さん)

「仏教情報センター」は、「精神のよりどころとしての仏教を現代社会に生かす」ことを目的に、1983年、首都圏在住の伝統仏教9宗派の有志僧侶によって設立されました。現在では、20~60代の僧侶、150余名がボランティアで参加し、電話による人生相談、仏事相談などを受ける「仏教テレフォン相談」を中心に活動しています。

 仏教テレフォン相談は、年末年始やお盆などを除く、平日の午前10時~午後4時に開設され、これまで、のべ18万6千件もの相談を受けてきました。家族問題やひきこもりの当事者からの相談、独居している高齢者の話し相手など、相談者のさまざまなこころの声に応じています。

 かつては、仏事に関する相談が多かったそうですが、最近では人生相談、さらには精神的な苦しみを訴える相談が多くなってきたといいます。「死にたい」という相談電話が急増していることに、理事長の長谷川岱潤さんは、「『死にたい』は『生きたい』の悲鳴であると理解し、相談者の気持ちに少しでも寄り添える対応を心がけている」と、相談への向き合い方を伝えています。 

 電話相談のほかにも、同センターでは、お寺の本堂を会場に、さまざまな分野の講師を招いて講演を聞く「いのちを見つめる集い」を年に8回開催しています。参加者が、講師や僧侶とともに語り合う時間が設けられているこの集いには、リピーターも少なくないようです。

 また、東京・巣鴨のとげぬき地蔵尊など、寺院境内において年一回行われる「仏教街頭相談」も、相談者と直接交流することができる機会として継続されています。

 親身になって寄り添う「衆生済度」の教えに基づき、宗派の垣根を超えて人びとの苦しみに寄り添う活動が高く評価され、受賞となりました。

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正力松太郎賞 奨励賞

古仲 宗雲さん(秋田県男鹿市/雲昌寺副住職)

 奨励賞を受賞した古仲宗雲さんは、2003年より、檀家さんや近隣の人に楽しんでもらい、お参りに来てほしいという想いで、境内に咲いていた一株のアジサイを、独学で学びながら挿し木し続けました。

 現在では、境内を埋め尽くす1500株が咲き誇るまでとなり、「あじさい寺」として広く知られるようになりました。毎年の拝観者は5万人を超えています。

 お寺のある秋田県男鹿市周辺は、近隣の市町村と同様に顕著な過疎化が進む地域だとされています。多くの人に訪れてもらうことで、地域全体の活性化につながればという想いが、地道な植樹を続けるさらなる原動力となったようです。

 2017年からは、地域住民と手を携えて「おらほの北浦町づくり協議会」という組織も立ち上げました。地域で新たなつながりを築くとともに、アジサイを使った特産品の創作など、さらなる地域振興にも貢献しています。

 古仲さんはまた、ご遺族を支援する「グリーフケア」の活動にも注力してきました。医療や福祉、いのちについて考える仏教者を中心とした集い、「ビハーラ秋田」の活動に1997年から参加し、グリーフケアの重要性と仏教との関わりについて実践を深めました。

 現在も、「秋田グリーフケア研究会」等で傾聴活動を実践し、自坊においても毎年、花の時期に「音楽と花と祈りの集い」を開催して、自助グループのご遺族のこころのケアに取り組んでいます。

 仏教精神に基づいて人びとの「苦」を読み解き、地域社会に深く関わりながら草の根的活動に尽力するその活動が高く評価され、受賞に至りました。

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