非行

「弱いものいじめ」のない社会へ―「ホームレス」を襲う子どもたち

8月14日、東京で活動する「ホームレス」支援団体などが行った、都内の公園や駅の周辺に寝泊まりするホームレス状態の人、347名を対象とした聞き取り調査の結果を発表しました。

それは、都内に住むホームレス状態の人の約4割に襲撃を受けた経験があり、その加害者の約4割が、小学生を含む子どもや若者たちだったという、たいへんショッキングなものでした。

子どもたちによる襲撃の内容については、物を使った暴力が半数以上であり、ペットボトルや石を投げつけたり、鉄パイプで殴ったり、小屋へ火をつけたりと、いずれも大けがにつながりかねない深刻なものです。当事者の男性からも、「複数の少年たちから『こじきめ、死ね』などという言葉とともに、花火や石を投げつけられた。でも、怖くてやり返すなんてことはできなかった」「いつ襲われるかわからないという恐怖があって、眠れない日もある」などという言葉が聞かれました。

襲撃は"路上のいじめ"

なぜ子どもたちは、ホームレス状態にある人を襲うのでしょうか。この問題に長く取り組んでいるフリージャーナリストの北村年子氏は、取材で出会った少年の「誰かがいじめられてても、みんな見て見ぬふり、関わるなと思ってる。子どもが変なんじゃない。大人の世界で起こっていることが、とっくに全部、子どもの世界で起こってるだけだよ」という声を聞いて、ホームレス状態の人びとへの襲撃は、弱い立場にあるものが、さらに弱い立場のものを攻撃する"路上のいじめ"であることに気づいたと言います。

加えて北村氏は、この問題の背景に、子どもたちが学校や家庭においてさまざまなストレスにさらされ、ありのままの自分の価値を認めてもらえないつらさを抱えていること、そして、安心できる居場所や人間関係を持つことができない状況があることを指摘しています。つまり子どもたちが、自尊感情を保てない"心のホームレス"となっていることが、この問題の大きな原因の一つと考えられるというのです。

もちろん、子どもの心の問題だけではありません。すべての"いのち"はひとしく尊いものであり、あらゆる人に幸せに生きていく権利があるということを教える、人権教育も重要な課題でしょう。国や人種、生活様式などのために差別されることによって、その"いのち"が脅かされることはあってはならないことです。

また、子どもの価値観は、親の価値観を反映したものであるという視点も重要です。ホームレス状態になる方は、病気や障がい、家庭の問題などさまざまな事情を抱えています。身近な大人がそうした人に「汚い」「邪魔だ」「なまけている」と、日頃から蔑みの気持ちで接していれば、子どもも自然とそう思うようになってしまうことでしょう。

他者に対する想像力と寛容さは、一日で育まれるものではないはずです。

いのちの教育を

平成7年以降、襲撃事件で亡くなったホームレス状態の人は、都内だけで10名にのぼります。死にいたらないまでも、重傷を負わせられるような痛ましい事件は全国でも後を絶ちません。

子どもや若者を加害者にしないためにも、教育機関や支援団体、寺院、地域、そして家庭が連携して人権教育を進めていくことが求められます。

おしゃかさまが仰せのように、自らの"いのち"が大切なことを知るように、ありとあらゆる"いのち"もまた大切であり、いかなる理由があろうともこれを奪うことがあってはならないことを、みなさんで伝えてまいりましょう。(岳)