対人関係・コミュニケーション

伝わっていますか?自分の気持ち―若者のためのコミュニケーション入門―

ぴっぱら2013年3-4月号掲載

「友達と仲良くできたら」「親友がいたらいいな」「自分のこと、もっとわかってほしい」――そんな思いは、誰もが抱く願いです。10代〜20代前半は、心身の成長とともに人間関係が急速に広がる世代でもあり、対人的な面でもたいへんデリケートな時期だといえるでしょう。

さまざまな価値観を持つ人と出会い、その関係の中から自我を探し当てようとする作業は本来健全なものですが、今、そうした作業に向き合うことを恐れたり、極端につらく感じられたりする人も多いのです。

周囲の人と温かな関係を築いていくために、また毎日を心安らかに過ごすために、コミュニケーションのコツを学んでいきましょう。

◆コミュニケーション2つの分類

コミュニケーションには、大きく分けてバーバル(言語的)・コミュニケーションとノンバーバル(非言語的)・コミュニケーションがあります。

バーバル・コミュニケーションは、たとえば会話や文章の内容などによるコミュニケーションのことで、ノンバーバル・コミュニケーションは、表情や声の抑揚、視線やジェスチャーなど、言葉による表現以外のコミュニケーションを指します。コミュニケーションといえば、何より会話が大切、と思いがちですが、アメリカの心理学者アルバート・メラビアン博士の研究によれば、人の印象の約9割を決めるのは、実はノンバーバルな要素ではないかといいます。

視覚情報――見た目・表情・しぐさ・目線など...55%
聴覚情報――声の質・大きさ・速さ・テンポなど...38%
言語情報――話す内容そのもの...7%

一生懸命話しているのに、誤解されることが多くて......という人は、もしかしたら会話の内容以外の部分で、何か違うメッセージを送り続けているのかもしれません 

たとえば、「調子はどう?」と聞かれて「元気だよ」と答えたとしても、声に力がなかったり、伏し目がちだったりしたら、質問者は「本当に?大丈夫?」と思わず聞き返したくなるでしょう。逆に、海外では言葉が通じなかったとしても、現地の人とコミュニケーションをとることができたりもします。これは、ノンバーバルな部分で自分の意思を伝え合うことができているからではないでしょうか。

◆ノンバーバル・コミュニケーション

私たちが思っている以上に、相手への印象を決めてしまうノンバーバルな要素。特に、初めて人と会う時には、いつもより少し気を配りたいものですね。では、具体的にはどんな点に気をつければよいのでしょうか。

外見・服装など
人は、外見の印象がよいとその人の内面やその人にまつわることまで「よいものだ」と判断する傾向があります(心理学では「ハロー効果」といいます)。

就職試験の際に、学生がスーツを着て清潔感のある雰囲気を目指すのはその効果を狙ってのことです。流行の髪型や自分好みの格好がしたい、と思うのも普段は悪くありませんが、大切な局面では「相手にどんな印象を与えたいか」を考えると効果的でしょう。

表情(特に笑顔!)
近年、脳には「ミラーニューロン」と呼ばれる神経細胞があり、目の前にいる相手の感情を読み取り、それを自分の感情として取り込む働きがあることがわかってきています。あくびがうつる、泣いている人をみるともらい泣きをする、というのも、まさにこのミラーニューロンの働きだといわれています。つまり、こちらが笑顔であれば相手も笑顔になったり、心地よい気持ちになったりするということです。人は楽しく幸せな気持ちのときに笑顔になりますが、逆に、笑顔になったから幸せな気持ちになるのだ、という説もあります。会話に自信がなく、相手を楽しませることができないかも......と思っている人は、まずは明るい表情を心がけてみましょう。 

姿勢
日本人に多いと言われる猫背ですが、これは暗く消極的な印象を与えがちです。つい背中が丸まってしまうという人は、意識をして時々背中を伸ばしましょう。背中を伸ばし、胸を張ることで肋骨もひろがり、呼吸がしやすくなります。全身に酸素が巡りやすくなるため、頭も表情もすっきりしてくることでしょう。目にも力が出てきます。

日本語には「腹が据わる」という表現がありますが、上半身を起こしまっすぐ立つと、全身の筋肉に神経が行き届き、腹が据わった状態に近くなります。どうも人前に出ると萎縮してしまうという人や、不安になったり元気が出ないと思ったりした時こそ、試してみてください。

目線と動作
アイコンタクトが苦手と感じる人は多いものです。特に緊張する相手では、相手の目をほどよく見るのはなかなか難しいもの。そこで、そんなときは目線を相手の鼻や口元に合わせることをおすすめします。話し終わるときに、目を合わせてうなずいたり微笑んだりすればよいのです。自然なコミュニケーションとなるでしょう。

また、話の最中で貧乏ゆすりをしたり、会話の最中に腕を組んだりする人もいます。これらの動作は不安を感じ、防衛的な気持ちでいることを相手に示してしまいますので、大切なコミュニケーションの場面では、控えたほうが無難です。

◆バーバル・コミュニケーション

ノンバーバル・コミュニケーションの意外な大切さをおわかりいただいたところで、いよいよ、会話のコツをお伝えしましょう。相手とより親しい関係を目指すには、やはり話の内容や言葉の選び方、話の聞き方が重要になってきます。

コミュニケーション上手というと、イコール、話し上手だと思う人も多いでしょう。話が上手なことは、それ自体ですばらしいことですが、実は、人には自分のことを知ってほしい、話を聞いてほしいという強い欲求があります。つまり、自分が一方的に話すだけではなく、相手の話を上手に〝聴ける〞人こそ、人に求められる存在となり得るのです。その具体的なポイントを見てみましょう。

温かい気持ちで聴く
よい人間関係を築きたいと思ったら、相手を尊重することが大切なことです。たとえ苦手な相手であっても、貴重な時間を共有していることに変わりはありません。先入観を捨てておだやかな気持ちで、相手の話を聴くようにしましょう。

評価・否定しないで聴く
相手の話を聴いているうちに、さまざまな疑問や否定的な気持ちなど、聴き手である自分自身の感想がわきあがってくるかもしれません。しかし、そこから一回脱し、カメラのフォーカスをゆるめるように、改めて話し手を見てみましょう。内容だけではなく、ひとりの人間としての相手に注目すると、不思議なことに温かな気持ちが湧き上がってきます。そうして評価をやめて聴くことで、逆に話そのものがクリアに頭に入ってきます。

話をさえぎらない
話の結末が予想できても、話をさえぎったり結論を述べたりすることは避けましょう。相手は「何かを伝えたい」というより「話したい」気持ちなのかもしれません。相手の話がまとまらないようなら、助け舟を出してあげるのもよいでしょう。

「聞いている」という姿勢をあらわす
適度なあいづちやうなずきは話を促し、話し手を安心させる効果があります。また気の置けない間柄であれば、時には遠慮なく声をあげて笑いましょう。笑い声を聞いた話し手は、「話してよかった」と嬉しい気持ちになることでしょう。

◆目指そう、アサーティブな表現

「聴く」ポイントは、すべて「自分がされて嬉しいこと」だということにお気づきでしょうか。これこそがコミュニケーションの大切な前提であり、自分が話をするときも、それは同じことです。しかし、相手の気持ちを尊重するあまり、自分の気持ちを正しく伝えることができないのでは健全なコミュニケーションとはいえないでしょう。

たとえば電車に乗っていて、隣に座った人のヘッドフォンの音楽がうるさかったとします。あなたならどうしますか?

A、「うるさいんですけど」と大きな声で注意する
B、内心イライラしているが、相手には何も言わない
C、「音漏れしているようです。静かにしてもらえませんか」と言う

Aは、言った方はすっきりするかもしれませんが、トラブルの元になりそうです。それどころか、あなたが一番伝えたい「音を小さくしてほしい」ということが叶えられないかもしれません。Bはその場は何事も起こりませんが、あなたが我慢してイライラしている状況は変わりませんし、相手には問題が伝わりません。Cのような表現は、音漏れに気づいていないかもしれない相手を(おもんぱか)りつつ、自分の要望を伝えることができています。

このA〜Cは、A=攻撃的な表現......自分のことだけを考えて自分の意見を押し通す表現、B=非主張的な表現......自分を抑えて相手を最優先させる表現、C=アサーティブな表現......自分の言いたいことを主張しながら相手にも配慮する表現であり、一番目指すべきはCの表現ということになります。

アサーティブな表現を上手に利用すると、意見を押し通そうとして相手とケンカになったり、相手の顔色を伺って言いたいことが言えなかったり......といったイライラが解消されます。その際に大切なことは、相手に伝える前に自分の気持ちや考えを整理する習慣をつける、ということです。

特に家族間など、親しい間柄では「わかってもらえるだろう」との気持ちから攻撃的な表現になりやすいですが、相手にきちんと伝わってこそのコミュニケーションですので、言われた相手がどのように感じるかを想像することが重要なのです。

また、アサーティブな表現のポイントは、①自分を主語にする、②自分の気持ちを伝える、③お願いの表現を使う、ということです。

感情的になると「あなたは...」とつい2人称で語り、相手を責めているような口調になりやすいので気をつけましょう。自分を主語にして、自分が感じた素直な気持ちを、やわらかく伝えるのがコツです。

例:「何、そのお母さんの言い方!ひどい、ムカツク」→「私、その言葉で傷ついたよ。そういう言い方はつらいから止めてもらえないかな」

◆自分も相手も尊重する気持ちで

以上のように、コミュニケーションにはいくつかのポイントがありますが、コミュニケーションが上達するには、なんといっても「場数を踏むこと」が必要です。コミュニケーションは、ひとりで部屋にこもっていても決して上達することはありません。多くの人と会う中で相手の考えを受けとめ、理解しようとし、自分の気持ちを伝えようと勇気をもって訓練することが大切なのです。

「自分の話はつまらないのではないか」「嫌われたらどうしよう」「反応が悪かったらどうしよう」と失敗することを恐れず、まずは、相手と話してみましょう。もし相手からこちらの望むような反応がなかったとしても、それは相手の受け取り方によるものかもしれないので、いたずらに自分を責めないことです。しかし、相手の反応をうまく覚えておいて、「今度はもう少しやさしく言ってみたほうがいいかな」などと冷静に「修正」し、再挑戦すれば上達していくことでしょう。

若い人だけではなく、誰にとってもコミュニケーションは難しいものですが、人との温かな関係を築くことは、かけがえのない喜びを生み出します。大切なのは、自分も相手も、その双方を尊重する気持ちではないでしょうか。とびきりの笑顔で、勇気を持って。さあ、始めてみませんか。