家庭・暮らし

空とつながり、 仲間と出会う―子ども主体の子育てを

ぴっぱら2014年5-6月号掲載

子どものころ、皆さんはどんなことをして遊んでいましたか。最近の子どもたちはゲームばかりで、外遊びをしなくなったとよく言われます。しかし、外で遊ぼうにも道路は危ないし、昔よく見かけたような空き地もなく、公園で遊ぼうと思っても禁止事項の看板が多く、苦情が出たりもするのです。

子どもたちはいま、一体どこで遊べばよいというのでしょうか?
こうした、子どもたちを取り巻く環境に疑問を持った保護者が中心となって「冒険遊び場」は作られました。

冒険遊び場とは、大人が用意した遊びのプログラムや既成の道具ではなく、子ども自身の意思を尊重して「やってみたい」ことを実現していく遊び場です。ヨーロッパが発祥と言われる冒険遊び場ですが、日本では1970年代に最初の遊び場ができて以来、全国でその取り組みが広がっています。

◆夢中になれる「遊び場」を

秋晴れの午後、東京都江戸川区にある「新田の森公園」では、冒険遊び場「発見きち」が開かれていました。開かれているとはいっても、そこは公共の公園の中。さまざまな人が行き交う中で、子どもたちが遊んでいるというゆるやかな雰囲気です。

この日も、学校が終わるころから子どもが集まり始めました。早い時間には低学年の子どもや乳幼児を連れたお母さんが、そして徐々に、高学年の子どもや中学生の姿が増えてきます。木の枝でチャンバラ遊びをする子や、枯葉や木の実を拾う子、木に登ってみる子がいるかと思えば、「発見きち」で用意される工具やスコップ、ボールなどを使った遊びに興じる子どももいます。

小さな子に人気なのは工作です。用意された廃材を、幼稚園児らしき子がのこぎりで一心不乱に切っています。工作というよりは大工遊びですが、切った木材を木工用ボンドでくっつけてみたり、葉っぱを埋め込んでみたり、トンカチでたたいてみたり......。「あぶないよ!」と止められそうなものですが、ここではそれがありません。

また、七輪でのたき火を楽しむこともできます。ひとりでやってきた小学一年生の男の子が「ぼくがやる!」とマッチを擦って炭に火を移そうとしますが、なかなかうまくいきません。「新聞紙を下に敷かなきゃムリでしょ」と、大学生のお兄さんに教えられ、うちわであおぐこと10分。無事に火が入ると、大仕事を終えて男の子は満足そうです。

女の子のグループもやってきて、持ってきたマシュマロを棒に刺して焼いています。入れ替わり立ち代わり、たき火に吸い寄せられるかのような子どもたち。火には不思議な魅力があります。「公認の火遊び」なんて言葉も浮かびます。

「発見きち」では、手作りの特大ハンモックも用意されています。小さい子なら4〜5人が乗れるでしょうか。大きな木に渡されたハンモックは安定感も十分で、ブランコのように大きく揺らされると子どもたちの歓声が上がりました。

ハンモックは人気があるので、譲り合って遊ばねばなりません。次に乗るのを待つグループがあれば、声をかけて一緒に乗せてもらう子もいます。
年齢も学年も、学校も違う子どもたちは、やりたいことをするためにその子なりの方法で、ほかの子に働きかけていました。

すっかり日が落ちて辺りが暗くなってからは、中学生が火を囲み始めました。まったりと、ただ火を見つめる子、携帯をいじる子......過ごし方は自由でいいのです。そうして、最後の子どもが帰ったのは夜8時をまわったころでした。

◆「やってみたい」を大切に

「発見きち」には、年齢制限や大きな決まり事はありません。もし何か問題があればその都度対応します。この日案内してくださったのは、「発見きち」を運営する「江戸川遊ぼう会」代表の斉藤洋子さんです。冒険遊び場がふつうの公園遊びと違うのは、遊びの材料となる道具が用意されていること、そして斉藤さんをはじめ、大人の見守りがあることなどでしょうか。「発見きち」の開催は毎週金曜日で、月に一度だけ土曜日にも開かれています。

斉藤さんが、ほかのお母さんたちと「発見きち」を始めたのは、ご自身の娘さんが幼かった17年ほど前のことです。子どもがのびのび遊べて、お母さんたちも気軽に立ち寄れるような場所はないものかと考えていたところ、冒険遊び場と出会いました。

気になる安全面については、他所の冒険遊び場を見学したり、何かあったときには応急処置ができるようにと、消防署に救急講習を受けに行ったりしたそうです。努力の甲斐あってか、開催からこれまで保護者からの苦情はほとんどありません。

またこの活動には、地域の理解が欠かせないそうです。斉藤さんは、地元のお祭りに参加してつながりをつくったり、地域の学校を訪ねて活動の様子を報告したりしています。たき火も、行政に掛け合って許可を得ることができました。運営資金は、カンパを募ったり、地域での古紙回収協力の奨励金制度を利用したりしているそうです。

見守りつつ、本人のやってみたいという気持ちを尊重する。困った時にはいっしょに考える。それが、ここのモットーですと斉藤さんは語ります。
「学校でも家庭でも、子どもたちが遊べるはずの公園であっても、いまはあまりにも管理され過ぎているように感じます。秩序は大切ですが、それしか知らないで育つと、大きくなってからも自分の人生を生きられないように思うのです。誰かの型にはまらなくていいんだということを知ってほしい。しんどいこともあるけれど、自分らしい生き方を選び取っていってほしいと思います」

失敗することを恐れないで、生きるのに必要な力を、遊びを通じて身につけてほしい。そんな思いが、「発見きち」に取り組み続ける原動力となっているようです。

◆リュックひとつで

子どもたちに、心身ともに健やかに育ってほしいと願わない親はいないでしょう。しかし、効率とスピードが求められる現代では、子どもにゆっくりと向き合い、良い環境を整えることは難しくなっています。

そうした中、理想とする子育てを「自主保育」という形で実現している場があります。五十嵐亨さんと泉さんのご夫婦、そして娘さんが家族ぐるみで運営されている、茨城県つくば市の「コロボックル」は、そうした場の一つです。

コロボックルには現在、2〜6歳までの20人ほどが入会しています。4歳以上は週5日、3歳以下は週4日が活動日で、活動時間は9時半〜14時ごろまでと、幼稚園と変わらない保育時間です。

コロボックルがユニークなのは、何といっても活動のほとんどを野外で行っていることです。子どもたちはリュック一つで毎日自然豊かな場所に出かけ、暑い日も寒い日も、雨の日も風の日も外でのびのびと過ごします。「そんなのあり?」と驚く方がおられるかもしれませんが、コロボックルは20年以上、このスタイルを続けてきました。

こうした自然体験の活動を基軸にした子育てや保育のあり方が、いま、少しずつ注目されています。保育所や幼稚園ばかりでなく、託児所、自然学校、育児サークルなど、幼少期の子どもを自然豊かな環境の中に置き、子どもの自主性を大切にした保育をする活動概念は、「森のようちえん」などと呼ばれています。

11月のある日。子どもたちは、小さなリュックにお母さんが用意してくれた野菜を詰めて、園のバスに乗り込みました。この日は、週に一度の野外料理の日です。子どもたちは五十嵐さんの住まい兼、園舎である通称「子どもの家」に着くと、手際よくまな板を1枚ずつ持ち、外のテーブルに並べました。そして子ども用の包丁をにぎると少々怪しい手つきで野菜を切っていきます。

「これ、いちょうににてない?」「にてるー!」
「ねぇ、これでいいの?」「こらー、てつだってー」
そんな会話が飛び交いながらも、子どもたちはマイペースに野菜を切っていきます。まだ切るのが難しい小さな子は、当番のお母さんと一緒に野菜を洗っています。

この日の献立は、いわしのつみれ汁に豆ごはん。献立はお母さんたちが話し合って決めました。庭の大きなかまどからは美味しそうな香りがしてきました。できあがるまでは、お外でひと遊び。そうして、お待ちかねの「いただきまーす!」の時間となれば、色とりどりのビニールシートの上で、大人も子どもものんびり食べ始めます。今日は雲ひとつないお天気。お日さまがみんなを照らしていました。

◆みんなで見守る子育て

コロボックルでは、野外料理の日以外は、リュックにおにぎりと水筒、レジャーシート、着替えなどを詰めて、毎日、市内の公園などにお出かけしています。お昼ごはんも、もちろん外で食べます。

春はお花見をしたり、カエルをつかまえてみたり。夏は川遊びをしたり、木蔭でままごとをしたり......。寒い季節には、たき火をしたり、凧をあげたり。雨の日だって、カッパを着て出かけますが、出られないときには「子どもの家」で、はた織りや粘土のやきものに挑戦したりします。

コロボックルには、決まったカリキュラムはありません。自然の中で、異年齢の縦集団を通じて自分らしく生きていく力を身につけようというのがモットーです。

「こういう保育はとっても面白いんですよ。でも、何でも専門家にお任せしたい、というお母さんには難しいかもしれませんね」と、五十嵐さんは語ります。保護者は、月に2〜3回は、当番日として子どもたちに付き添います。また、月に一度ずつミーティングと茶話会が開かれ、活動の内容や子どもたちの様子などが話し合われます。

「子育ての時期って、実は本当に短いんです。せっかくの時期に、子どもの成長を見逃してしまうのはもったいない。子どもをどんなふうに育てたいのかは親御さん次第です。お互いに相談し合いながら、みんなで成長を見守っています」

一方で、この時期に何もお勉強をしなくて、小学校に上がったときに大丈夫?と聞かれることもあると五十嵐さんは苦笑します。今のうちに勉強をさせておかなければ、将来出遅れてしまうのではと心配する風潮が、最近は特に強いようです。

「情報があふれすぎていて、親御さん自身もどうしてよいのかわからなくなっているのかもしれませんね。でも、不安になる前に、まずは子どもの表情をしっかり見ていてほしいのです。子育てはこうしてあげたからこう育ってくれるだろう、というようなものでもありません。子どもは、まずは安心を与えられてめいっぱい遊んで育つことが大切なんです。また、うまくいかないことがあっても、苦労を知ると深い子になれる。だから逆境にあっても『よかったね』と思うんです」

ちょうど遊んでいる子ども同士が、おもちゃの取り合いになり、一人が泣き始めてしまいました。すると、年長の子ども数人が駆け寄ってきました。泣いている子の肩を抱き、「順番っこにしなよ」とささやいたり、ほかの年長の子も「なかよししないとだめだよ、ねっ」と優しく諭していました。

トラブルがあったときには、どうしたらいいのか。自分よりも小さい子には、どう説明したらわかってもらえるのか。異年齢の子ども集団が構成する小さな社会の中で、自分たちの居場所を快適なものにするために子どもたちが自ら考え、試みている様を目の当たりにすることができました。

◆子どもたちに生きる力を

親御さんも、関わりの中から多くのことを学んでいます。親同士の年齢差がある中で、年上の親に経験を学んだり、年下の親からは違う価値観を教えられたりします。誰が偉いということもなく、お母さんたちは一生の友だちになっていきます。いざというときに、五十嵐さんに相談できるのも心強いことでしょう。お母さんの一人は語ります。

「ここに来て一番変わったのは、親の方かも。それまでは子どもが棒なんか振り回したら『アブナイ!』ってすぐ止めてましたから」
コロボックルや、「発見きち」のあり方を知ると、自然が豊かな場所で、少々のリスクは恐れずに「やりたい!」という子どもの気持ちを尊重しているところに共通点が見えてきます。

子どもがつまずきそうなところを排除し、管理して、大人が護り続けられれば、子どもが嫌な思いをすることは少ないでしょう。しかし、大きくなって社会に出ればどうでしょう。理不尽なことや、傷つけられるようなことにもたくさん出合うはずです。厳しい現実を前に、果たして対処することができるでしょうか。

ひるがえって、いまの日本を考えると、生活のあらゆることがシステム化され、お金を出せば簡単にサービスが買えてしまいます。しかし、安全で清潔で、予定通りのことが当たり前とされている中でも、リスクは必ず生じるものです。リスクに出合ったときにどう対処できるのかは、その人の生きる力にかかっています。

「立派な」子どもではなく、たくましい子どもを育てるために、まずは週末、親子で外に出かけてみてはいかがでしょうか。