財団法人
全国青少年教化協議会

〒104-0045
東京都中央区築地3-7-5
 築地AIビル5F
TEL:03-3541-6725
FAX:03-3541-6747

Copyright
The ZENSEIKYO FOUNDATION
for youth and child welfare
All Rights Reserved.


臨床仏教研究所
 
■概要

 臨床仏教研究所は、財団法人全国青少年教化協議会(全青協)に付属する総合的な教育研究機関です。21世紀を迎え、いま世界中で経済優先のグローバル化が急速に進んでいます。日本国内を見ても、経済的な側面にばかり重きを置いた価値観が社会を覆い、大人のみならず子どもたちまでもが狭量な価値観の中で人生を選択しなければなりません。このような状況の中で、時として、子どもたちは犯罪に走り、若者たちは夢を失って引きこもり、中高年は自死を選択していきます。
 当研究所は、このような社会情勢を踏まえて、ホリスティックな観点に立ちながら、家庭・学校・社会教育の現状を調査研究し、人間の情操に焦点をあてた教育や福祉のあり方について仏教界ならびに一般社会に対し広く提言していきます。また、現代社会において僧侶や宗教者が果たすべき役割や公益性の高い寺院の活動について探求し、教育プログラムの立案やコンサルティングを行っていきます。


■事業内容

【調査研究】 一般人の仏教や葬儀についての意識調査を行い、ニーズ・シーズについて分析を行う。また、寺院を対象として活動について意識調査を行う。
【研修会】
調査分析に基づいて、現代の僧侶や寺院が求められ実践すべき活動に関する研修会を実施する。また、教団・団体などが主催する研修会へ講師を派遣する。
【プログラム開発】 時代を拓く若手僧侶の育成プログラムを開発し実施する。また、仏教情操教育に基づいた青少幼年の教育プログラムを開発し公開していく。
【コンサルティング】

僧侶や寺院に対する一般人や社会のニーズをベースに、時代に対応した公益性の高い寺院活動についてコンサルティングを行う。

【情報発信】 調査分析結果をはじめ寺院活動に有用な情報について、適宜、会報誌やインターネット上などで広く発信していく。

■研究体制

所長・理事 斎藤 昭俊 日本仏教教育学会名誉会長・全青協事務総長
理事
石上 善應 淑徳短期大学学長・全青協理事
奈良 康明 駒沢大学名誉教授・全青協理事
渡邉 寳陽 立正大学名誉教授・全青協理事
山崎 龍明 武蔵野大学教授・全青協評議員
島薗 進 東京大学教授
上席研究員 鈴木 晋怜 智山伝法院教授・全青協専門委員
神  仁 全青協主幹
研究員 磯山 正邦 智山伝法院前嘱託研究員
ジョナサン・ワッツ 国際仏教交流センター研究員
客員研究員 石上 和敬 武蔵野大学准教授・全青協専門委員
小谷みどり 第一生命経済研究所主任研究員
専門委員 長谷川正浩 弁護士・全青協評議員
秦  辰也 シャンティ国際ボランティア会理事
源  由理子 明治大学准教授

■所在地

〒104−0045 東京都中央区築地3−7−5 築地AIビル6階(全青協内)
Tel : 03−3541−6746 Fax : 03−3541−6747
e-mail  thinktank@zenseikyo.or.jp



全青協・臨床仏教研究所共催事業
「第1回仏教教化事例発表大会」を開催いたしました

 数多くあるお寺が、その規模に応じて地域の人々に喜んでいただける活動を行うならば、ともに同じ社会を生きる人たちの支えとなることができるのではないでしょうか。
 そこで全青協では、付属の臨床仏教研究所と共催し、青少幼年教化活動をはじめ、寺院を中心に公益的活動を行っている方々による活動発表と意見交換・交流の場として、「第1回仏教教化事例発表大会」を平成22年10月5日に開催いたしました。
 本大会では、日頃から寺院の内外で公益的活動に積極的に取り組んでおられる僧侶や寺院関係者に、その活動内容と理念、方策などをご発表いただき、今後の寺院のあり方を模索しておられる方々の道しるべとして、広くご提案いただきました。
 当日の詳しい内容については以下のページをご覧下さい。

【日時】 2010年10月5日(火)13:00〜18:00(交流会18:15〜)※おかげさまで終了いたしました。
【会場】 東京グランドホテル(東京・港区芝公園)
【式次第】

 

1.開会挨拶                                           

2.基調発題「ツナガリ社会の回復に向けて」             
  奈良康明 /臨床仏教研究所理事・駒澤大学名誉教授

―休憩・移動―

3.分科会 (教育・福祉・地域交流他発表)                           
  【第T会場】〜【第V会場】

                ―休憩・移動―

4.全体会・総括                        
        
5.閉会挨拶                          
  
6.交流会           



【参加費】 全青協&臨床仏教研究所会員・学生・発表者 無料 /一般 2000円(交流会費は別途)
【定員】

150名

【主催】

(財)全国青少年教化協議会・臨床仏教研究所

【お申込み】


E-mailまたはFAXにて、お名前、ご住所、お電話番号、ご所属(寺院名)、交流会参加の有無、会員・非会員の別を明記の上、下記までお申込み下さい。
        
財団法人 全国青少年教化協議会(全青協)発表大会係
FAX:03-3541-6747
E-mail:gbs@zenseikyo.or.jp

【お問合せ】 TEL:03-3541-6725(全青協)




「お寺と葬儀に関する一般人の意識調査」実施報告

少子高齢化、人口の一極集中と過疎化といった社会構造の基礎的な要因に加え、都市住民の無壇化、若年層の宗教離れ、直葬の一般化など、寺院を巡る環境は大きな変化を見せています。臨床仏教研究所では、今日の世間の人びとの寺院や葬儀に関するニーズを探るために、2009年3月、「お寺と葬儀に関する一般人の意識調査」を実施しました。

送付先:全国の40歳から69歳までの男女600人
有効回収数:566 (94.3%)

意識調査の報告書(PDFファイル)はこちらからダウンロードできます。




臨床仏教叢書「なぜ寺院は公益性を問われるのか」刊行
なぜ寺院は公益性を問われるのか
近年、寺院の公益性についてさまざまな観点から論じられるようになってきた。公益性が認められない寺院は、将来的に課税対象となる可能性もあると一部では指摘されるようにもなった。
それでは、そもそも「公益」とはいかなることなのだろうか?
昨年施行された公益法人関連三法の中では、公益とは「不特定多数の者の利益」を指している。では、特定少数の檀家を対象に活動を行ってきた寺院には、公益性がないということになるのだろうか?
本書ではまず、寺院側が公益性についてどのようにとらえているのかを調査したアンケートの報告がなされている。この中で、「お寺は地域社会に広く開かれるべきかどうか」という問いに対して、90%以上もの人が、イエスと答えていることは印象的である。
調査報告に続いて、公益性についての疑問に答えるべく、法律、宗教学、NPO組織論の専門家が、それぞれの観点から公益性について詳細に解説を行っている。その上で、実際に公益的な活動を実践しているいくつかの寺院を紹介し、本書が提唱する臨床仏教の可能性についても論じている。
巻末では、「祈りの公益性」「葬式仏教の公益性」といったテーマで、同研究所の研究委員がさまざまな立場から論考を加え、公益性についての視座を深めている。
時代の狭間にある寺院の今後を考える上で、有益な一冊と言えよう。


臨床仏教研究所編/白馬社発行
定価:1800円(税別)


「お寺の公益性を考えるシンポジウム2009」
 ―社会はお寺に何を求めているのか―

全青協の付属機関である臨床仏教研究所では、10月6日、東京・港区の東京グランドホテルにて「お寺の公益性を考えるシンポジウム2009」を開催いたしました。昨年3月に開催した研究所の設立記念シンポジウムでは、全青協会員を対象に行ったアンケートをもとに、各界の専門家による公益性についての講義や、実際に公益的活動を行っている寺院関係者の活動紹介を行いました。
 今回は、さらに一般の人々の、お寺や僧侶に対する思いを把握しようと行った「現代人の寺院に対する意識調査」の結果をもとに、再び「お寺の公益性」についての問いを深めようと開催いたしました。
 当日は寺院関係者を中心に、研究者や一般の来場者を含め、定員を上回る140名もの参加者を迎えることができました。開催にあたり、さまざまな立場の大勢の方からお申込みやお問合せをいただき、この問題に対する関心の高さをうかがわせました。

◆一般人の寺院に関する意識とは?
 第1部は、研究員の磯山正邦による『現代人の寺院に対する意識調査報告』が行われました。この調査は当研究所が第一生命経済研究所に委託し、本年2月に行ったもので、40?69歳の一般男女600人への郵送アンケートによるものです。有効回収率は94・3%、男女比はほぼ半数でした。
 最初に、「あなたは昨年1年間にお寺を訪れましたか?」という問いには、回答全体の80%近くが「訪れた」と答えました。
 年齢が上がるにつれ訪れたという人の割合もあがり、その目的は、「お墓参り」が62・8%と全体の過半数を占め、次いで「観光・旅行」「法事」「除夜の鐘つき・初詣」と続きました。
 また、複数回答が可能な「お寺で行われたら参加したい行事は?」という問いには、「お坊さんの説法を聴く会」と答えた人が35・8%と最も多く、「座禅」「落語・演劇・音楽会などのイベント」「お葬式や戒名、お墓についての勉強会」と続きました。総体的には、お寺を会場とした娯楽的なイベントよりも、仏教ならではの行事を期待する人が多いという結果となりました。ちなみに、この質問では「どれにも参加したくない」と答えた人も18・3%存在しました。
 他にも、菩提寺までの所要時間とその訪問頻度の関係、また、今後のお寺との付き合い方に関する質問などが紹介されましたが、興味深いものとしては、「死に直面した時に信仰する宗教があることは、心の支えとなりますか?」という質問で、これに対する回答は、70%以上の人が「そう思う」「まあそう思う」と答えていました。現在は宗教離れが進んでいるといわれていますが、中年以上の世代に関してはこんなにも多くの人が「宗教によって心が軽くなる(だろう)」と感じていることがわかります。
 また、これに対して「あなたが死に直面したら、お坊さんが心の支えになってくれると思いますか?」という問いには、今度は70%以上もの人が「そう思わない」「あまりそう思わない」と答えていました。
 宗教に対する期待とは裏腹に、お坊さんとの心理的距離は決して短くなく、信頼関係が築かれているとは言いがたい、そんな現状が浮き彫りになりました。

◆「元気なお寺のつくり方」
 第2部では、宗教学者の正木 晃さんによる基調講演「歴史に学び現状に応える公益性?元気なお寺のつくり方?」が行われました。正木さんは日本とチベットの仏教を中心に研究し、大学で教鞭を取るかたわら、仏教の智恵を現代に再生し積極的に利用していこうという、各種の企画を実践しています。
 正木さんは、現在の仏教がいわゆる「葬式仏教」と揶揄されることに対して、葬儀や法事を中心に活動する現代の寺院のあり方は、日本の歴史・風土などの介在により現在の形となったもので、それ自体は決して軽視されるべきではないと語り、僧侶の妻帯や肉食の是非を問う議論などに代表される「本来の仏教とはこうあるべき」という言説に惑わされず、大切に継承するべきであると述べました。
 しかし、現実にはお経や法話の印象、また費用の面に関しても一般の方の満足度は決して高くないことに言及し、葬儀や法事を心をこめて行えているか、壇信徒の話を聞けているか、僧侶自身が常に学ぶ姿勢を持っているかなど、公益性を論ずる以前に僧侶としての「基本」を守ることが大切であると解説しました。
「僧侶は厳格な生活を送るべきとは言わないまでも、世俗の人々とまったく同じでは一般の人が納得できるでしょうか? 朝夕の勤行をきちんとする、修行を定期的に行うなど、僧侶として最低限のけじめをつけていく覚悟は必要なのではないでしょうか」という言葉は、多くのお坊さんがドキリとするところかもしれません。
 また、先日の臓器移植法改正の議論についても、「脳死の問題は、仏教者として本来真っ先に論ずるべき国民の『いのち』に関わる問題であるにもかかわらず、確固たる意見が公にはあまり出てこなかったという状況は非常に残念。このような姿勢では、いざという時に仏教も、僧侶も信用されないのでは」と語りました。
 仏教者は教学にとどまらず、社会問題全般を自身の身近な問題として学び、自分の言葉で語れるようにしておくべきと正木さんは続けます。また、寺門興隆は寺庭婦人の後顧の憂いない活動があってこそ実現すると、住職と寺庭婦人の協力体制の重要さについても言及しました。一連のお話は具体的でわかりやすく、会場では熱心にメモをとりながら話を聴く姿が目立ちました。

◆パネルディスカッション
 第3部は正木さんをコメンテーターに迎え、「公益性のある寺院活動とは」という論題で研究員4名がアンケート結果とこれまでの話をもとに、より具体的な公益的活動の内容について議論を交わしました。
 上席研究員の鈴木晋怜は、「お寺が『社会に開かれる』ことと、『公益性を持っている』ということは、同一線上で考えるべきではない」と語りました。お寺の公益性とは、ただの「公益」ではなく、宗教的な要素を基盤としなければ意味がない。それは、端的に言えば僧侶として「祈ること」ではないかと自身の見解を述べました。
 そして、「僧侶は檀家など、特定の人のためにだけ活動しているように見えるかもしれないが、平素より世界平和など、広く人々のためにさまざまなことを祈っている。その祈りがあらゆるところにおよび、世界のために目に見えない確かな力をおよぼしているとすれば、これほど公益的なことはない。寺院が具体的に何かを行っていく、その前提として祈る心や宗教心がまず大切なのではないか」と語りました。
 同じく上席研究員の神 仁は、昨年の12月に施行された公益法人三法の政府による見解に触れ、「これからは仏教寺院も一層、『公益的か否か』という観点から厳しく判じられる可能性があると述べました。そして、前述のアンケート結果をもとに、「寺院に何らかの社会的・公益的活動を期待する人はかなりの数にのぼる」とし、葬儀などの宗教的活動をこれまで通りしっかりと行っていくのはもちろん、それだけでは一般の人のニーズに応えきれていないのではないかと疑問を投げかけました。
「今の仏教者は、生老病死の『苦』を抱える人に寄り添い、話を聴き、うなずくことができているだろうか。そうした現場の苦悩の中に宗教者が飛び込むことこそ『行』となり、自身の成道観や往生観の形成と、公益的活動が両立する形になるのではないか。葬式仏教の持つ公益性ももちろん大切だが、悩みを聞いて欲しい、死に往く人の心を支えて欲しいという多くの願いがあるのだから、『葬式仏教』だけではなく、人々に寄り添う『臨床仏教』を我々は目指すべきではないか」と述べました。

◆必要なのは変革への大いなる決心
 客員研究員の小谷みどりは、紹介しきれなかったアンケートの自由回答の中で、お坊さんに対する不満として多いのは、「葬式・法事の法話がしっかりしていない」という意見だったと解説。本来のお坊さんとしての活動をていねいに、心を込めて行っていくことはとても大切だと思うと語りました。
 また、葬儀をしない「直葬」が都会を中心に急増していることを挙げ、「お坊さんたちが葬儀の場ですら求められていない現在、突然公益的活動を行おうとしても信用されないのではないか。仏教的な儀礼の意義を感じていない人が増えていることを受け止め、まず真剣に人のいのちに向き合う『仏教』を体現していくことが、皆に求められる公益活動につながるのではないか」と論じました。 
 これを受けて正木さんは、「いまの仏教があまり一般の人からの信頼を得られていないとすれば、ある程度わかりやすく見せないと人は納得しない。だからこそ、仏教に基づく価値観など、目に見えないものを可視化する努力は何よりも必要」と述べ、例として「少なくとも仏教ではこう考え、こうしていったほうが幸せになれるんだ」という具体的な方針をアピールする必要があるのではないかと解説しました。
 そして、「現状を変えるには、ゼロから始めるような業界全体の覚悟が必要なのは間違いない」と、仏教界全体で大きな努力が必要となることを示唆しました。
 ディスカッションのコーディネーターを務めた客員研究員の石上和敬は最後に、「もはや、公益性があるかないかいう問題ではなく、この『公益性』という切り口がこれほど話題になっている以上、それに対して仏教の立場から真剣に一般の人の期待に応えるべき時が来ているのではないか」と語り、締めくくりました。
 
◆先人に続くために
 臨床仏教研究所は、全青協を母体として昨年発足しました。戦後の高度経済成長に伴い、物質至上主義が台頭する一方、子どもたちの大切なこころの成長がおざなりにされていることを憂いた政財界の識者と伝統仏教教団が、子どもたちの教化育成のために協力し創立したが全青協です
 当時は仏教子ども会活動の推進が、全青協の重要な運営の柱でもありました。
「子どものころから仏教に親しみ、変わることのないその教えを通じて強く、そして慈しみの心を持った人間に成長してほしい」という方針に、実践的活動を行う多くの仏教者が賛同し、年月を経た現在も、子ども会を開催したり、自殺の問題に取り組んだり、地域のために尽力されたりと、多くの会員が地道な活動を続けておられます。
 現在、お寺の数は全国に約7万5千あると言われていますが,そのようにさまざまなかたちで利他的活動を行う方や、何か特別なことを行なわずとも、大きな志で仏道に邁進されている方がいる一方、こころ無く、仏教者としての意識が低い僧侶・寺院も多数あるという大きな落差を、最近ますます感じずにはいられません。
 誰よりも一般の方がそのことを敏感に感じ取り、いわゆる「お寺離れ」につながっていると言えるのではないでしょうか。
 正木さんは講演の中で、「お寺の公益性というと、つい目立つ事例ばかりがクローズアップされるが、お寺の持つ規模や能力はさまざま。地道な努力をしているところに光を当てていくことが、全体の意識を上げるため必要ではないか」と語りました。
 全青協もそのことを心に留め、誠意をもって実践をされている多くの方々とともに、さらなる支援・啓発活動に取り組んでいく所存です。






※おかげさまで無事終了いたしました。

【日時】 2009年106日(火) 13:30開会 17:30閉会予定 
(13:00〜受付開始)
【会場】 東京グランドホテル
(都営地下鉄 三田線芝公園駅〈A-1〉出口徒歩2分)
【参加費】 無料
【対象者】 僧侶、寺院関係者、研究者、NPO関係者、仏教大学系学生などテーマに関心のある方だったら誰でも 
【プログラム】 13:30〜14:00 現代人の寺院に対する意識調査報告 
報告:磯山 正邦/研究員(智山教化センター所員)

14:00〜15:15 基調講演:「歴史に学び現状に応える公益性」 
講師:正木晃(慶應大学・立正大学非常勤講師)
 
15:30〜17:00 パネルディスカッション「公益性のある寺院活動とは」
パネリスト :小谷みどり/客員研究員(第一生命経済研究所主任研究員)
       鈴木晋怜/上席研究員(智山伝法院教授)
       神 仁/上席研究員(全青協主幹)
      
コメンテイター :正木晃

コーディネーター:石上和敬/客員研究員(武蔵野大学講師)

【定員】 100名(要申し込み、先着順)
【問合せ・申込】 全青協/臨床仏教研究所事務局
TEL:03-3541-6746 e-mail:thinktank@zenseikyo.or.jp
【主催】 (財)全国青少年教化協議会 臨床仏教研究所


共生(ともいき)シンポジウム2008「環境・平和・開発(かいほつ)」開催! -もうひとつの生き方を探る-
 
 今、私たちの社会は、経済主導のグローバリゼーションの荒波の中で、さまざまな問題に直面しています。景気の後退や社会保障の切り捨てなどによって、国内ではワーキングプア、ネットカフェ難民、自殺といった社会問題が多数噴出しています。青少年のあいだでは人間関係の希薄化が進み、引きこもる若者の増加や、不特定の人間を対象とした不可解な犯罪など、私たちの暮らしやいのちを脅かす危機的な現象も起こっています。
 経済発展のみを目的としたグローバリゼーションは、世界的な規模で地域経済・共同体・伝統の崩壊を引き起こし、途上国における貧困・紛争・環境破壊はもとより、日本をはじめとするいわゆる先進国においても、格差社会などの問題を生み出してきました。モノ・カネを物差しとした目先の幸福を追求する価値観は、もはや限界に来ているように思われます。
 社会全体に閉塞感が蔓延する中、経済主導ではない「もうひとつの生き方を探る」ため、臨床仏教研究所(全青協付属)では、去る11月17日に「「共生きシンポジウム2008」を主催しました。このシンポジウムは第32回世界仏教徒会議の開催に合わせて企画されたもので、全日本仏教会をはじめとする仏教諸団体の協力の下に実現したものです。
 ここでは各スピーカーの発題の概要についてご報告をします。


■スピリチュアリティーに基づく社会参加[島薗進・東京大学教授]
 シンポジウムは、臨床仏教研究所の島薗進理事による発題から始まりました。もうひとつの生き方を探る上で、共生社会とスピリチュアリティーというテーマに基づき、宗教、とくに仏教の精神性と社会参加のあり方、そして若者に対する姿勢について問題提起がなされました。
----仏教はと社会の関わりについて、第二次大戦中に仏教が負の意味で社会参加をしてしまった歴史があります。たとえば、仏教者が戦争へ行く若者に対して、その心構えを説くといったことがあったことは、闇雲に社会参加することは仏教本来の在り方に反目し合う結果を導き出すということでしょう。宮沢賢治のように仏教を物語によって説くことを選択し、戦争に反対し、農村に入って貧しい農民の生活を助けながら新しい精神文化を気づこうとした仏教者もいました。しかし、仏教界としては、結局、国家主義の中に飲み込まれてしまったという厳しい現実があります。
 このような経験を経て、戦後の仏教は社会に関わるあり方を失い、家庭の中の葬式仏教と化していっきます。そして、現代社会では葬式仏教という在り方さえも危うくなっている状況があるのではないでしょうか。
 現代の日本の若者は、宗教そのものには興味はないといわれています。しかし、スピリチュアリティーには興味を持っている人が多いのです。若者の中には大きな期待があるのですが、それを宗教だとは感じてはおらず、むしろアニメの中などにそれを見いだそうという傾向もあるようです。
 若者たちに対して宗教に基づくスピリチュアリティーが高い可能性を持っているのだということをどのように伝えるのかということが、これからの共生社会を考える上での大きな課題ではないでしょうか。今日の話の中からそのヒントが出てくることを願っています。

■ローカリゼーション[ヘレナ・ノーバーグ・ホッジ/スウェーデン]
 島薗理事の発題を受けて、ゲストスピーカーがそれぞれの活動をふまえ、仏教精神に基づいたもうひとつの生き方の可能性について語りました。
 ヘレナ・ノーバーク・ホッジさんは、スウェーデン出身の環境活動家で、現在はイギリスをベースに活動を展開しています。経済主導のグローバリゼーションに対して、持続可能な開発の在り方としてのローカリゼーションについて啓発活動を行っている世界的なオピニオンリーダーです。
----私は40年以上にわたって経済的な発展、すなわちGDP(国内総生産)がどういう問題を引き起こしているのか意識を高めようとしてきました。また、通商の規制緩和がいかに人や自然を破壊してきているかについても警鐘を鳴らしてきました。
 現在、自由貿易が我々を一つにしているという間違った認識がありますがこれは間違った見方です。実際には、グローバリゼーションという世界市場経済が地域の市場を壊し、世界各国で貧困を増大させ、同時に文化の多様性をも破壊しているのです。またそのことによって、多くの人たちが、自尊心を失っているのです。
 近年の株式市場は、実態とはかけ離れた中で取引が行われています。600兆ドルという、実際のGDPの10倍のバブルを作り出してしまいました。これまでは、自由経済を指示してきた経済学者もようやく規制の必要性について語り始めました。しかし、そのような規制だけでは、貧困をなくすこともできないし、環境破壊を富めることもできません。私たちはこれまでとは異なった新たなルールに基づいて生きることを始めなければならないのです。
 とくに重要視しなければならないのが、食であり、食を生み出す地域における小規模農業です。そのことに気づいたのは、1970年代にインド北部のラダックを訪れた時でした。ラダックではお釈迦様の時代さながらに、小さなコミュニティーの中で、相互依存性に基づいて何世紀にもわたって人びとが生きてきました。そこでは地産地消という生活システムが維持されてきました。
 今日、私たちがスパーマーケットで買い物をするとき、食べ物の中にメラニンが入っていたり、その食べ物が子どもたちの労働搾取の中で生産されたものであることを知らないで買っています。産地と消費地がつながる小さな経済的ユニットが重要なのです。
 地方分散化とローカリゼーション(地域第一主義)こそが、すべての人を幸福にする共生社会の大きなキーワードであると考えています。すでに、世界中でローカル化を推進する運動が始まっています。

■ ブッダの教えに基づく開発[パイサン・ヴィサーロ/タイ]
 パイサンさんは、タイの地方都市の寺院をベースに、非暴力・宗教間対話を行うグループの中心人物として、環境保護、紛争解決、地域開発を推進してきました。また、現在は、死に対する精神的・肉体的ケアのため、宗教者と医療者のネットワーク作りに力を入れています。
----これまで私たちは身を粉にしながら物質的な社会の開発と発展のために生きてきました。しかしながら、このような生き方を変えねばならない時期が来ています。人はより多くの収入を得るようになり、そのことが人をより利己的にさせ、即物的にさせているのです。自分のことばかりを考え、物事のつながりを考えずに二元的に物事を見ようとする。このことが、相互の対立を引き起こし、消費者中心主義を助長させ、ときには薬物依存といった社会問題をも引き起こしているのです。
 タイの僧侶や寺院は過去数十年にわたり、主に、身体的、物質的な福祉の向上に関してソーシャルサービスを行ってきました。これらの活動は少なからず成功してきました。とはいえ、多くの僧侶がしだいに、このようなアプローチ方法の限界に気づくようになります。身体的、物質的な福祉の向上の他に、社会的、精神的な充足がコミュニティー開発においてとても重要だということが指摘され始めたのです。
 私は、開発(かいほつ)についての基本的アイデアをお釈迦様の教えに基づいて次のように説明しています。
 お釈迦様は4つの開発の要素について言及しています。4つの要素とは、肉体的(カーヤ)な開発、こころ(チッタ)の開発、社会(シーラ)の開発、精神的(パンニャ)な開発のことです。これらの4つが関係し合い全体的(holistic)な開発ができるのです。
 このような考え方は、ダンミック・ディベロプメント、仏法(真理)に基づく開発と呼ばれおり、タイの社会においては一般的になってきています。仏教的なソーシャルサービスとは、これら四つの要素の開発を成し遂げることを意味しています。
 人びとは、単に、貧困や公害、犯罪や戦争、人権侵害や差別から解放されることを目指すのではなく、慈悲と智慧によってこころの中に平和をもたらすことを目的とすべきです。そして、その平和は奪うことではなく与えることによって実現できるものです。人は持つことによって幸せになると思っていますが、実際には与えれば与えるほど幸せになっていくのです。心と社会の安寧を実現させましょう。

■ コミュニティーとスピリチュアリティーの開発[A・T・アリヤラトネ/スリランカ]
 アリヤラトネさんはスリランカ最大のNGO「サルボダヤ会」の設立者であり、50年にわたった農村開発運動に取り組んできました。サルボダヤ運動は、開発、平和構築、精神的な覚醒を目指す総合的な運動であり、伝統的な価値観を守りつつ、多様な宗教に根ざした新たな社会について提案しています。
----マクロ経済のシステムは社会の中で暴力を生み出してきました。さまざまな国で内戦を生み出してきました。マクロ経済は、従来あった地域社会を壊してきたのです。それと同時に人の心も環境も破壊してきました。
 アメリカでは大統領選挙において人びとの意識が転換されました。世界的な搾取、多国籍企業の謀略はうんざりだという思いが表明されたのです。GDP(国内総生産)はGNH(国民総幸福量)と比べて何も意味はありません。
 私たちが今目指すべきことは、世界が一つのコミュニティーとして存在することを意識すると同時に、地域コミュニティーを再生することです。スリランカは長い間ヨーロッパ諸国の植民地でした。その間に、統治されることになれてしまい、活力を失ってきた歴史があります。私たちは、これまでグラーマ・スワラージ(村の自己統治)に力を注いできました。自らが自らを統治するという視点が世界的にも重要なのだと思います。
 また、一方で、人の霊性も開発しなければなりません。スピリチュアルな力を再発見すること、それをダルマ・シャクティ、真理の力と呼んでいます。真理の力が人びとを力づけるのです。そこにギャナ・シャクティ、智慧の力が生じます。それがジャナ・シャクティ、つまり人びとの力を生み出すのです。
 我々は互いに分かち合い、愛し合い、決して破壊的な行為をしない道を選択する必要があります。そうすれば、こころも平和であり、社会も平和であり、自然も平和である環境を作ることができるでしょう。それが本当の開発ということです。


■地球生命システム[ジョアンナ・メイシー/アメリカ]
 ジョアンナ・メイシーさんは、30代半ばにインドを訪れたときに仏教に出会います。以来、相互依存(縁起)と一般システム論との比較研究に力を注ぎ、他方で平和や環境などの市民活動に自身の哲学を織り交ぜながら活動を展開してきました。
----産業化・工業化が進んだ現代の社会において、その成功を計る価値基準はマーケットシェアです。マーケットシェアがどれだけ広がったかということが、企業にとっても個人にとっても重要な尺度になっています。テレビCMなどの広告の目的は、いかに人をどん欲にさせるかということです。人をどん欲にさせ、もっと消費しろと言い続けます。その消費の量でそれぞれの国の成功の度合いも計られています。
 そこには精神性が忘れ去られています。本来の人間性がどんどんと破壊されているのです。その結果、世界中で鬱病を煩っている人が多くなっています。しかし、これは個人レベルでは解決することはできないことがらです。
 互いがつながりを感じながら、ケアをすることで解決することができます。そのことに気づいた人たちが、自分の感じていることを本音で話すようになってきました。お互いに理解し、助け合おうと動き始めてきたのです。自分自身が宇宙の一部であることを感じること、そして、お互いの開発を助けようとすることが大切です。
 お釈迦様が悟った縁起とは、相互の関係性のシステムであり、この地球上で私たちはお互いにつながり合っているのだということです。科学的にも地球は生きるシステムであることが分かっています。地球から搾取するようなことがあれば、それは私たち自身が傷つくことを意味します。
 今私たちがすべきことは、一人ひとりのこれまでの経験を投入し一緒に働くことです。それによって、すばらしい世界を共に作ることができるのです。持続可能な社会を作るということは、いのちを継続させていくことです。それは、自らの存在の意味を発見することでもあります。
(東京大学武田ホールにて)





※おかげさまで無事終了いたしました。

【日時】 2008年1117日(月) 13:00開会 17:00閉会 
(12:30〜受付開始)
【会場】 東京大学工学部「武田ホール」
(東京メトロ千代田線根津駅1番出口徒歩5分、
 東京メトロ南北線東大前駅1番出口徒歩15分)
【参加費】 1,000円(学生500円、全青協会員・臨仏研運営賛助会員は無料)
【シンポジスト】

■基調発題 
島薗進(臨床仏教研究所理事、東京大学文学部教授)

■パネリスト 
A.T.アリヤラトネ(サルボダヤ会代表<スリランカ>)
ジョアンナ・メーシー(環境哲学者、仏教学者<アメリカ>)
ヘレナ・ノーバーグ・ホッジ(言語学者、ISEC代表<スウェーデン>)
プラ・パイサン・ウィサロー(僧侶、仏教と社会のためのブディカネットワーク代表<タイ>)
神仁(臨床仏教研究所上席研究員、(財)全青協主幹)

■コーディネーター
鈴木晋怜(臨床仏教研究所上席研究員、智山伝法院教授)

同時通訳あり

【定員】 300名(要申し込み・先着順)
【問合せ・申込】 全青協付属臨床仏教研究所事務局
TEL:03-3541-6746
e-mail:thinktank@zenseikyo.or.jp
【主催】

●主催
(財)全国青少年教化協議会付属臨床仏教研究所

●後援
(財)全日本仏教会

●協力
(特活)アーユス仏教国際協力ネットワーク、(特活)開発教育協会、
(社)シャンティ国際ボランティア会、ジュレー・ラダック



全青協創立45周年記念事業・臨床仏教研究所設立記念シンポジウム

お寺の公益性を考えるシンポジウム2008
-社会とつながる寺院の可能性を探る-

 

 全青協は2007年に創立45周年を迎え、その記念事業として、変動の激しい社会情勢を踏まえ、より時代のニーズに即した教育や福祉のあり方について広く提言するべく、今年3月7日をもって「臨床仏教研究所」を立ち上げました。その記念シンポジウムとして「お寺の公益性を考えるシンポジウム2008」が、同日、東京港区の「東京グランドホテル」櫻の間にて開催されました。事前予約では当初の予想を上回る反響があり、また当日は、寺院関係者をはじめ、一般の方々、マスコミ関係者など200名あまりが来場し、現代社会における寺院の役割と、新たな可能性に対する関心の深さがうかがえました。

◆研究所活動プレゼンテーション &寺院意識調査報告
 シンポジウムの開会に先立ち、全青協事務総長であり、臨床仏教研究所の所長に就任した斎藤昭俊による挨拶、そして全青協主幹で同研究所上席研究員の神仁による研究所活動プレゼンテーションが行われました。その後、石上和敬同研究所客員研究員によって、2007年に全青協会員(僧侶、寺族)を対象に行った寺院意識調査の報告が行われました。
 アンケート回答数は341通、回答者の平均年齢は61歳。アンケートによると、「寺院は地域社会に開かれるべきか」という質問に対しては9割以上の回答者が「そう思う」と答えており、また、「社会で必要とされていると思う活動は」という質問の回答としては、供養や布教活動といった、本来、寺院の本業とされるべき活動はもちろんのこと、一般の人びとの悩み相談や、日曜学校などに代表される、青少幼年に対する情操教育活動など。また、世相を反映してか、高齢化社会に対応する取り組みも必要であろうと過半数以上の回答者が考えているという結果となりました。さらに、アンケートに寄せられた会員の声も紹介されました。
 寺は開かれるべきか否か?という問いには、「社会貢献を行っていない寺はこれから忘れられていくと思う」「寺を訪れる人は遠近を問わない。住職の人間性が問われている。仏教を知りたい人はたくさんいる」「お寺を地域に解放すれば、また地域の人達がお寺に協力してくれる。お寺は地域のシンボル的存在でもある」など、お寺の公共性を推進したいという意見が多く見られました。
 その一方で、「(寺は開かれるべきとは)思わない。檀家数が多く、その世話だけで精一杯であるから」という慎重な意見もあるようでした。寺院の規模や地域性など、さまざまな条件、環境の違いにより寺院の公益活動に対する見解や、意欲に温度差が見られるのは当然のことで、研究所の調査研究がさらに期待されるところでもあるようです。

◆セッション1 「公益性とは何か?―― いま問われる寺院の公益性」
 2部構成のシンポジウムの第1部は、パネリストとして長谷川正浩氏(弁護士)世古一穂氏(金沢大学大学院教授)そして島薗進氏(東京大学教授・宗教学者)の3氏を招き、各氏の発題のちに鈴木晋怜上席研究員をコーディネーターとして、約45分間のディスカッションが行われました。
 最初に発言した長谷川氏は、宗教の持つ公益性について、本来、非常に漠然としたものであるとした上で、改革され、今後新たに施行される公益法人法の概要を説明しました。「そもそも国家権力が、宗教法人に公益性のあるなしを干渉するべきではない。しかし、寺院や僧侶であるわれわれの立場としてはしっかりと、寺院にどのような公益性があるのかを認識、自覚するべきです」と語り、公益法人法改正に臨む今後の寺院のありかたを指摘しました。
 次に世古氏は、営利と非営利について図示、概説しながら、寺院は本来、非営利の立場をとる市民セクター(NPOセクター)に分類されるべきであるにもかかわらず、営利を追求する企業セクター側に傾いていることが問題であると指摘。そして「不特定多数の人が集まって、不特定多数の人のために何かを行う、それこそが公益性です」と語りました。
 その上で、寺院が地域社会において公益的な活動を行うためには、マネージメントが必要不可欠であり、「NPOとしてのお寺」を寺院はもっと自覚し、お寺のもつ、地域に密着して存在してきたという素地を生かして積極的に活動していくべきではないかと提言しました。
 さらに、世古氏が提唱している、食を核としたコミュニティ支援の事業モデルである「コミュニティレストラン」を紹介。お寺を利用したコミュニティレストランはまだ存在しないので、ぜひ検討してみてください、と参加した寺院関係者に語っていました。
 宗教学の専門家である島薗氏は、世古氏の話を受け、コミュニティレストランについては寺院が行うことのできる公益的活動のひとつの可能性であると前置きした上で、何よりもお寺が本来果すべき「宗教らしさ」にこそ寺院の基礎的な価値があると発言。そして、「寺院として本来の役割を確実に果すことこそが公益性の基礎です」と、お寺の本分を自覚し、僧侶はたゆみなく求道するべきであると強調しました。
 さらに、長谷川氏の「昨今、問題とされているのはお寺としての利益と住職の利益が一致してしまっていることが多い」という発言を再掲、既存の寺院の形に固執し、利益を守ろうとすることがあればそれは大変な問題であると、注意を促しました。
 続くディスカッションは、コーディネーターからの問いかけに3氏が順に答えていく形で行われました。「現代の伝統教団のあり方について率直に提言して下さい」という問いに対して、3氏はそれぞれの専門家としての立場と経験から発言していました。中でも、長谷川氏の「現代の寺院はマンションの管理者のようなもので、檀家制度の中で葬儀と法要によって機能している」という発言は印象的で、お布施が高い、などと言われるのは宗教がいまやサービス業としてとらえられていることの表れである。お布施は代価でなく「布施行」であるということを一般の人に理解してもらえるよう寺院は努力し、同時に僧侶も宗教者として常に研鑽していく覚悟がもっと必要なのではないか、と現代の寺院、そして僧侶自身が抱える問題点に端的に言及していました。



◆セッション2「社会とつながる寺院の可能性」
 第2部は、大河内秀人氏(小松川市民ファーム代表・浄土宗寿光院住職)佐藤朝代氏(NPO法人けやの森自然塾代表)袴田俊英氏(こころといのちを考える会代表・曹洞宗月宗寺住職)により活動報告が行われました。3氏はそれぞれが僧侶・寺族という立場にあり、実際に地域社会において公益性の高い活動を行っています。
 はじめに報告を行った大河内氏は、東京都江戸川区内の寺院の住職を務めるかたわら、寺の別院としてビルの一室を確保、地域のNGOが集う「小松川市民ファーム」として開放しています。
 同時に国際支援、人権問題、「チャイルドライン」に代表される子どものこころの居場所作り、そして環境問題にも積極的に取り組み、自房の屋根にも太陽光発電のパネルを取り付け、地域で行う環境問題啓発のモデルケース作りに取り組んでいるそうです。
 大河内氏は、「さまざまな価値観がありますが、本当の意味での資産とは、お金や物だけではなく、未来に開かれている私たちみんなの生活を豊かにしていくものを指します」と語りました。そして、「人と人とのつながりこそがさまざまな問題を解決し、みんなを幸せにする大きな基盤です。寺院は「場」を提供し、地域の人びとの幸せを築く大いなる可能性を持っているのではないでしょうか」と述べました。
 次に、埼玉県狭山市にある「けやの森学園幼稚舎・保育園」の園長であり、NPO「けやの森自然塾」の理事長を務める佐藤氏が活動報告を行いました。佐藤氏は約30年前、僧侶の夫とともに無認可幼稚園を設立、以来、子どもたちに自然の持つ素朴さや美しさ、偉大さ、不思議さを、五感を通して知ることができるよう、自然体験を重視した幼児教育を行っています。
 また、卒園児や父兄から「もっと自然とふれあいたい、遊ばせたい」との声が上がったのをきっかけに、後にNPO法人化する「けやの森自然塾」を平成4年に立ち上げました。ここでは週末を中心に、川でのキャンプや登山、坐禅をしてお坊さんのお話を聴く小坊主修行体験など、生きる力を育むための自然体験をヴァリエーション豊かなプログラムを通じて行っています。佐藤氏は、自然の中で生き生きと活動する子どもたちの写真をたくさん紹介しながら、「いのちの大切さや、生きているという実感をもたせることこそ、生きる力につながるのではないでしょうか」と提言していました。
 最後に、秋田県藤里町で、特に目立つ高齢者の自殺に対処するため、平成12年に「心といのちを考える会」を発足させ、自殺防止の問題に取り組んでいる袴田氏が報告を行いました。袴田氏は日本一自殺者の多い秋田県、そしてその中でもとりわけ自殺率の高い藤里町の状況について語り、その原因のひとつとして、農村において、かつて農作業の共同作業を核にして存在していた人間同士のつながりが作業の機械化によって薄れてしまったことを挙げました。
 そして、誰もが立ち寄ることができ、語らいの場となりうる居場所を提供しようと、コーヒーサロン「よってたもれ」を開店。また、自殺防止のパンフレットを会で作成し、町のお年寄りに配布したとも語りました。
 さらに袴田氏は、「現代の効率主義の社会では快適さばかりを求め、悩み、苦しみ、悲しむという、人間誰しもが抱く感情に見て見ぬふりをしてしまいがちです。仏教を通じて考えると、誰にでも苦しみはあり、それを乗り越えていくところに人間の成長があります。自殺の問題は現代を象徴する苦しみですが、そのことと向き合って、私自身あらためて仏教について考えさせられました」と締めくくりました。



◆いま寺院と僧侶がなすべきこと
 その後のディスカッションでは、はじめにコメンテーターの小谷みどり客員研究員が、「現代の仏教は葬式仏教であるなどと言われるが、それどころか僧侶を呼ばないで行う葬儀のケースが増加している」と語り、現代の葬儀事情や寺院の抱える問題について概説しました。
 活発な議論が進められた後に、コーディネーターを務めた神は、第2部においては「都市・都市郊外・農村という、異なる地域における寺院の公益的活動を具体的に紹介したかった」と語り、「現代の寺院はとかく、寺族と檀家という狭い関係のなかでひきこもっているようにも見えます。元来、寺院は地域に深く根付いてきた歴史を有しており、もっと自分たちが存在する地域社会に目を向けるべきでしょう。そして地域社会のニーズを見据え、同時に自分自身の僧侶としての可能性、また指向性を知ることが大切です。寺院と地域社会双方が幸せになれる方法を模索することが、仏教精神に根ざした、公益性の高い寺院への第一歩となるのではないでしょうか」と結びました。
 寺院はいま全国に約7万5千存在し、そのいずれもまったく異なった事情と地域性を抱えています。大切な家族、友人、地域の人びと、そして自分を含むすべての人間を幸せにすることが宗教の目的だとすれば、今回のシンポジウムが、まさに「臨床」として宗教界、仏教界、そして寺院の公益的活動の手がかり足がかりになればと願ってやみません。

【日時】 2008年37日(金) 13:30開会 17:30閉会 
(13:00〜受付開始)
【会場】 東京グランドホテル
(都営地下鉄 三田線芝公園駅〈A-1〉出口徒歩2分)
【参加費】 無料
【内容】 研究所活動プレゼンテーション&寺院意識調査報告〈13:30〜〉
設立主旨:斎藤昭俊/研究所所長 
プレゼンテーション:神 仁/上席研究員 
寺院意識調査報告:石上和敬/客員研究員 

セッション1「公益性とは何か?――いま問われる寺院の公益性」
[発題&ディスカッション]〈14:00〜15:30〉
パネリスト:島薗進/東京大学教授 長谷川正浩/全日仏顧問弁護士 世古一穂/金沢大学大学院教授 
コーディネーター:鈴木晋怜/上席研究員
 
セッション2「社会とつながる寺院の可能性」
[活動報告&ディスカッション]〈15:45〜17:30〉
パネリスト:大河内秀人/江戸川市民ファーム代表 佐藤朝代/NPO法人けやの森自然塾代表 
袴田俊英/こころといのちを考える会代表
コメンテイター:小谷みどり/客員研究員 コーディネーター:神 仁

総合司会:磯山正邦
【定員】 150名(要申し込み)
【問合せ・申込】 全青協/臨床仏教研究所事務局
TEL:03-3541-6746 FAX:03-3541-6747
e-mail:thinktank@zenseikyo.or.jp
【主催】 臨床仏教研究所/(財)全国青少年教化協議会