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―緊急提言!!―

「宗教と教育」を考える

Vol.3 子どもたちを戦場へ送り込まないために

◆自衛隊のイラク派遣(派兵?)
 2004年1月31日、衆議院は野党欠席の中、自衛隊のイラク派遣(派兵?)案を可決しました。そして翌2月1日、イラク南部のサマワに派遣される陸上自衛隊への隊旗授与式が、北海道旭川市内の旭川駐屯地で行われました。式典に出席した小泉純一郎首相は、「日米同盟と国際協調を口だけではなく、行動で示すのが自衛隊だ。強い使命感と自信を持ち、この重要な国家の仕事に進むことを望む」との訓示をしたそうです。

 3日には、陸上自衛隊第一陣およそ90人が、家族らの振る日の丸の旗に見送られながら、北海道の新千歳空港を出発しました。第二次大戦終結後初めて、戦闘の続く地域に自衛隊員が派遣されたのです。昨年の8月1日に成立したいわゆる「イラク特措法」にもとづく政府の判断でした。今後、主力部隊約400人余りが、2月末から3月末にかけて3段階に分かれてイラクへ向かう予定です。また海上自衛隊も、陸自部隊の車両や機材などを輸送するための大型輸送艦と護衛艦をすでに出航させました。

 これはまさに戦後58年目に起こった日本の歴史を大きく転換させる出来事といえるでしょう。家族らに見送られる自衛隊員の姿を見ていた戦争体験者たちは、その多くが「戦時中の出征兵士の姿を思い起こした」と感想をもらしました。筆者自身も同様の思いを抱きました。そして、「恐ろしい時代になったものだ」とも……。

 この自衛隊のイラク派遣については、国民の中でも賛成と反対に意見が二分されています。

 つい先日、ある宗門系の中・高校で講演をした際、生徒たちにこの問題について「賛成・反対・よく分らない」の3つの選択肢を提示して意見を聞いてみました。その結果は、およそ10%強が賛成、10%弱が反対、あとの生徒はみなよく分らないという意見でした。たしかに一般の生徒たちにとっては、まだまだ「政治の世界のこと、遠い外国の話」なのかもしれません。

 イラクの問題を含め世界の平和について、充分に学んだり考えたりする機会や時間を、大人たちが提供していないのでしょう。子どもたちの中に、自分で考え決定する力を養ってこなかった日本の教育システムの弊害がここに現れているのかもしれません。
 しかし一方で、メディアの報道によれば、ある女子高校生が小泉首相宛に自衛隊派遣反対の署名を提出したことが伝えられています。これに対する首相の反応はというと、「自衛隊は平和的貢献をする。学校の先生も生徒に話さないと」と発言し、この女子高校生の行動を真っ向から否定しました。また、「先生方が『自衛隊は戦争に行く。憲法違反だ』と(生徒に)言ったら問題がある」などと、教育現場への「介入」とも取れる発言もしています。

 日本政府も批准している「子どもの権利条約」が認める、子どもたちの「意見表明権」を否定するような日本の首相の発言です。小泉さんのこのような姿勢に、強い憤りを感じるのは私だけでしょうか?

 一昨年のアメリカ同時多発テロ以来、世界は暴力連鎖の渦の中に巻き込まれていますが、どうも日本もその真っ只中にあるようです。過去60年近くにわたり守ってきた平和・非暴力という旗をこれほどいとも簡単に降ろしてしまうとは想像だにしませんでした。アメリカが占領しているイラクという国に、占領軍の一部として出かけていく自衛隊の姿を見る時、世界で評価されている平和憲法の理念とは、まったく逆方向に日本の国が進もうとしているようにしか思えないのです。

 子どもたちの未来はどうなっていくのでしょうか? とても不安で仕方がありません。

◆有事法制3法案の成立
 さて、イラク特措法は昨年の8月に成立したと申し上げました。実はその2カ月前に、これよりもさらに重要ともいえるある法律が成立していたのです。「有事法制」という言葉をみなさんはお聞きになったことがあるかと思います。「有事」とは予測を超えた「非常時」のことであり、具体的には「戦時」のことを意味します。ですからこの法律は、「戦時のための法律」「戦争をするための法律」とも言えるのです。

 2002年4月、小泉内閣は「有事法制三法案」を国会に提出しその成立を目指しました。三法案とは、いわゆる「武力攻撃事態法案」「自衛隊法改正案」「安全保障会議設置法改正案」のことです。これら三法案は衆参両議院で検討された結果、わずかな修正を経て昨年の6月6日に成立をしたのです。小泉首相の父親である小泉純也さんが、佐藤栄作内閣で防衛庁長官を務めていたころからの悲願が、およそ40年ぶりにかなった瞬間でした。

  この武力攻撃事態法の中では、次のように国民の義務が定められています。
「国民は、国及び国民の安全を確保することの重要性にかんがみ、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関が対処措置を実施する際は、必要な協力をする様務めるものとする。」(第8条)

 つまり、他者からの武力攻撃に際して、国民は国の求めに応じて協力をすることが義務付けられたのです。これを拒否することは基本的に法律違反となります。

 では、国が国民に求めるものとは何でしょうか? それは「徴発(物品・所有物の強制収用)、徴用(労働の強制)、徴兵(兵役の強制)」などが考えられます。実際、60年前にはこれらのことが当然のこととしてすべての国民に課せられていましたし、これに違うものは、「非国民」として「村八分」にされたり「投獄」されたのです。

 戦時には人権や民主主義は極端に制限される可能性があります。この法律は、まさにそれを合法的に、国が国民に課するためのツールと言えるでしょう。この場合、国とは国民のことではなく、首相を初めとする一部の為政者たちのことを指します。戦時には、国と国民は別個のものになるのです。

 この法律は、「武力攻撃が発生した事態または武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態」「武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」において発動されます。

 この、「認められる」あるいは「予測される」に至った事態を誰が判断するのかといえば、それは首相並びにその周辺の人たちということになります。つまり、小泉総理や福田官房長官、石破防衛庁長官らが、「予測される」と判断した場合、私たちの人権はさまざまな形で合法的に制限されてしまうのです。

 特に最悪な状況は「徴兵」ということです。近未来、今を生きる子どもたちがその対象になる可能性があります。韓国を初めとする日本の近隣諸国は、いまだに徴兵制を敷いており、日本も再びこれらの国の仲間入りをするかもしれません。

 「国際貢献することは日本にとって義務である」と言って、自衛隊のイラク派遣を決めた小泉首相です。もし、派遣された自衛隊員が殺害され、若い世代の人たちが自衛隊を除隊したり、新たに入隊する人数が減った場合、「国際貢献は日本国民にとっての義務である」と言って、徴兵制を復活させる可能性があるのです。

(ぴっぱら2004年3月号掲載)

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