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―教育セミナー―
平成15年度
■第9回 12月14日
「引きこもりからの旅立ち」Part3
―引きこもりに向き合う家族と第三者のありかた―
講師:斎藤 環 さん
(爽風会佐々木病院・精神科医長)
15年12月14日、第9回目となる全青協主催「教育セミナー21」が東京・築地本願寺にて開催されました。引きこもりをテーマにした教育セミナーは過去3回開催されてきましたが、今回は、10数年に及ぶ臨床経験をお持ちの爽風会佐々木病院・精神科医長の斎藤環さんを講師に迎えました。
斎藤さんは、著書『社会的引きこもり-終わらない思春期』で、引きこもり症状やその構造、両親の接し方の方法論などを詳細に記し、引きこもり問題を広く世に訴えたことで知られる第一人者です。
今回のセミナーは、前半の講演と、後半の質疑応答の2部形式で行われました。前半の講演では斎藤さんは、10年前にはほとんど見られなかった30歳以上の引きこもりが、現在では全体の4割にのぼる「引きこもり高齢化」について述べました。この現象が示すものは、引きこもりは放っておいた場合の自然治癒は起こりにくいということであり、このまま行くと2〜30年後には、5〜60代の息子を8〜90代の両親が支える「引きこもり高齢化社会」が到来するであろうということでした。
他にも、一人部屋に取り残される焦燥感や孤立感から平日の昼間が最も苦痛な時間であり、そのために昼夜逆転に陥る苦悩など、引きこもる本人の立場からの視点を交えた貴重な話がありました。
セミナー後半の質疑応答では、青少年問題に取り組む僧侶や実際に引きこもりに悩むご家族などからの質問に、斎藤さんから各事例に即した丁寧な回答を寄せてもらいました。
◆親の二律背反的態度〜親の自立・子の自立〜
今回のセミナーで斎藤さんは、特に親子の距離感の問題を強調していました。斎藤さんによると、「子どもが自立心を持つためには、親がいつ子どもを手放すかという明確な意識を持つこと」が重要であり、引きこもり家族はこの意識がない点が共通しているといいます。逆に言うと、「親が何でも受け入れて甘やかすどころか、子どもに小言をいつも言っている場合が多い。そして、小言をいいながら生活を支えてしまうという非常に強力な矛盾、いつまでも自分のそばにいてほしいという願望、子どもへの依存的態度がある」とし、この矛盾や願望がある限り、子どもは家から出られないとも考えていると、強い口調で語っていました。
そして、引きこもりにいったん陥ると、家族は誰にも相談しなくなり、自分たちで何とかしようと身内で抱えてしまい、それがいっそう引きこもりを強化してしまう「引きこもりシステム」の悪循環に陥るか、もしくは暴力的に子どもを追い出すといった極端な対応をとってしまう場合があるとのことでした。
このような家族内の慢性的態度の結果が引きこもりであるため、その対応には家族の意識的努力と根気が必要であるが、それだけでは不十分で、外部の力を借りた揺さぶりが必要ということでした。
◆会話がすべて
さらに今回の講演では、実際に引きこもり本人に対し、具体的に家族がどのように関わっていけばよいのか、その対応指針について多くの助言をもらうことができました。家族ができること、それはまず第一に「安心して引きこもれる環境作り」だそうです。
なぜなら、本人が引きこもり状態から脱するための自発性は、お説教やしつけなど、人から言われたことでは育つことが困難だからだそうです。また、本人自身は社会参加を望んで焦っており、本人が今以上自分を責めないよう、せめて家族は足を引っ張らないようにとの理由からこういう表現になるとのことでした。
そして、さらに大事なことは、「本人を安心させるための会話」だそうです。それは、同じ屋根の下でコミュニケーションがない状態が続くと意思疎通がままならず、腹の探りあいが起こり、親子間に生じる溝や誤解がいつまでも解消されないなどの理由からだと説明していました。本人が口をきいてくれない場合、まずは親の方から挨拶を根気よく続けていく事が大事で、それは挨拶ならそれだけで本人を傷つけることがないからだそうです。
また、親への恨みや罵りがあったり、顔を合わせられない状況下などであっても、粘り強く声を掛け続けることの大切さを訴えていました。これは、両親(特に父親)自身が、自分は親だから偉いというイメージにしがみついている以上、コミュニケーションは成り立たないからだそうです。親の哀れさ、惨めさも含めて会話を通じて本人に理解してもらうことで、はじめてコミュニケーションが開かれていくということでした。
◆終わりに
セミナーでは、一貫して両親が本人に対して会話をする姿勢を持ち続けることがいかに大切であるかや、両親が、子どもの思春期の段階で、いずれ子どもは家から出て行くものであるという前提を夫婦間や親子間で共有する事の必要性を何度も述べていたのが印象的でした。夫婦間の連合、親子間の適切な距離を親が自覚し続けるという事、そして親が子どもに自立を促すという事、そんなメッセージを引きこもりの問題は私たちに投げかけているように感じられた一日となりました。
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