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■仏教アントレプレナー養成講座
         時代を拓く仏教者たれ!

檀家制度はいつまで続くか?
 出生率およそ1.3という超少子社会に入った現在の日本。不況が続き社会保障も切り捨てられていく現状の中、子育て環境もけっして豊かなものとは言えません。政府は小手先だけで、さまざまな育児支援対策を講じてはいますが、少子化傾向に歯止めがかかる見込みはまったく立っていません。子どもの数が少なくなっていく社会、それは先進諸国の中でも、もはや成熟期を過ぎて老齢期に入った国の一つの様態と言えるでしょう。

 この1.3という数字が表す意味を、私たちはしっかりと受け止めなければなりません。これは取りも直さず、家のお墓を支えていく人間がどんどんいなくなっていくということを表しています。具体的には、ほとんどが長男と長女の結婚ということになりますから、一つの世帯で2つの墓を守っていかなければならないことになります。しかし、それは物理的にとても大きな負担となります。とくに今後も宗教離れが進んでいくであろう世相の中で、墓やお骨に対する思いが次代を支えていく人たちにどれほどあるものか、はなはだ疑問であると言わざるを得ません。

宗派を越えたおつとめ

 また、葬儀に対する感覚も、ここわずか10年ほどの間に大きく変わってきています。樹木葬や散骨をはじめ、宗教者を介さない友人葬など、葬儀に際しての選択肢はさまざまに広がってきています。そして、葬儀に関わるこれまでの伝統や慣習、文化といったものは、加速度的に変化をしていくでしょう。

 つまり、墓や葬儀に対する社会的な意識の変化は、江戸時代以来、寺社会を支えてきた檀家制度の瓦解を意味するものであり、ひいては、日本仏教の根幹を揺るがす重大な事柄と言えるのです。


仏教アントレプレナーとは?

 さて、アントレプレナーという言葉をお聞きになったことのある方は、どれくらいいらっしゃるでしょうか? おそらく20代の若い方は、就職活動や学習の際に必ず耳にする言葉だと思います。しかし、30代以上の方、そして特に高齢者の方の中には、初めて聞くという方が多いのではないでしょうか。

 このアントレプレナーとは、本来「起業家」と日本語に訳されます。つまり、新たなビジネスやサービスを起こしたり、そのための会社や非営利組織(NPO)を作ったりする人をアントレプレナーと呼んでいるのです。

 全青協では、現在、子弟教育の一環として、仏教アントレプレナーという新たなプログラムを提案しています。仏教アントレプレナーは、「起業家」という意味とは異なり、次のような3つの意味を持っているます。

1)自分自身について深く熟知し、自己の適性にかなう教化活動を創造できる人。

2)宗派の枠組にとらわれず、個人のレベルで仏教を捉え直し、新たな仏教の表現方法を創造できる人。

3)これまでの寺院の概念にとらわれず、地域社会や時代のニーズ(需要)に応えられる寺院活動を創造できる人。

25日
(火)
26日
(水)
27日
(木)
28日
(金)
あさ
内省
他宗教
理解
寺子屋NPO
レクチャー
ひる
自己理解
心理テスト
内省
振り返り
現場体験
(神宮寺・
ケアタウン
浅間温泉)
Tera創り
ワークショップ
よる
振り返り
仏教内
理解
振り返り

 去る11月25日から28日にかけて、長野県安曇野を場として仏教アントレプレナー養成講座(体験版)を開講しました。講座の目的はいうまでもなくこれら3つの条件を満たす人たちを育てることにあります。

 少子化が進む現代社会の中では、「守ること」が即「衰退すること」に直結する可能性があります。旧態依然としたお寺のあり方では、どんどん寺基を食いつぶしてしまうことになりかねません。プログラムでは、少子化や葬儀観の変遷など、社会の変化に翻弄されない確かな自分を築き、たとえ檀家制度が無くなった時代にあっても、自らの適性を踏まえた寺院運営や教化活動を展開できる僧侶の育成を目指しています。



気づきから始まる寺院活動
 今回の参加者は20代前半から30代後半までの6名でした。宗派は、曹洞・真言・日蓮・浄土とさまざまでした。プログラムは、「気づく」「知る」「体感する」「創造する」「評価する」という5つのテーマを設定し、内面から外面へと意識を徐々に移していきました。

 まず、初日から2日目にかけての「気づく」では、主体的に教化活動を行っていくために、いくつかの「自己理解心理テスト」を行い、客観的に現在の自分について分析し、自分とは何かという問いについて考察をしました。

内省指導の波場さん 続いて、「内省」という「気づきのワークショップ」を通じて、僧侶という衣を脱ぎ捨てた自分自身の内面に気づく作業を行いました。内省とは、ノートによる自己対話法と瞑想を組み合わせ、自分の内面を見つめるセルフカウンセリング法です。

 そして、2日目から3日目にかけての「知る」では、戒と欲望をテーマとして、「仏教内理解ワークショップ」を行いました。まず、参加者が所属する各宗派の戒と欲望についての考え方をそれぞれ発表してもらい、宗派間の同異を浮き掘りにしました。その上で、日々の生活という側面からの個人的な意見を披露し、実生活とは遠くなった戒の位置付けについて語り合いました。

 続く「他宗教理解ワークショップ」では、積極的に布教・社会活動を展開する新宗教団体を取り上げ、ビデオ教材を用いながら「仏教は日常生活の中で価値観となりうるのか」「絶対的な真理はあるのか」などについて語り合い、自身の信仰のあり方について考察を深めました。

神宮寺の高橋さん 3日目の午後からは「体感する」に入ります。松本にある臨済宗妙心寺派の神宮寺を訪問し、神宮寺で展開している教育・文化・福祉にまたがる広範な活動について、高橋住職から話を伺いました。また、その活動の一端であるデイケアーセンターを見学し、現場体験を通じて自身の活動のヒントとしました。

 最終日は「創造する」をテーマとして、「寺創りワークショップ」を行いました。寺の規模(檀家数)や地域性、その他の付随的な条件にもとづき、それぞれのグループが、架空のお寺の中でどのような活動を行うことが出きるのかシュミレーションし、新たな寺院活動をデザインし、3泊4日の研修が修了しました。

 そして、最後のテーマである「評価する」として、自分自身のお寺の活動をデザインするという企画書作成の課題を出し、12月末日までに提出してもらうことになっています。これに対して講師陣が評価を加えることにより、本講座は最終的に修了ということになります。

 4日間の研修中で参加者一人ひとりがどのような気づきを持ってもらえたのか、とても興味深いところです。提供させていただいたさまざまな情報を個の問題として内面化していく中で、それぞれの寺院活動に対する方向性が形作られていくのでしょう。今回は体験版でしたが、来年度にはさらに充実した内容の本科を実施する予定です。より多くの青年僧の方々が参加していただけることを期待しております。(神)

★参加者からの感想もご覧いただけます。
感想1
感想2

(ぴっぱら2004年1月号掲載)